税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
相続人は6名、財産は老朽化した自宅とマンション
先日、税理士と共同開催した相続相談会でのこと。都内近郊にお住まいの70代と思しき姉妹がお見えになりました。
「数ヵ月前に父親を亡くしたのですが、その際、父と同居していた長兄から『相続に必要な書類だから記入してほしい』と、封書が送られてきたんです。たいした財産じゃないですし、私も妹もお嫁にいった身ですから、さっさと書いてしまおうと思っていて。ただ、万一借金でもあったら大変なので、専門家の方に書類を見ていただけたら安心だと思って。それで今日はお伺いしました」
詳しくお話を聞くと、相続人となる兄弟姉妹は6名で、割合にすると1人あたりの相続分は親の財産の6分の1、パーセンテージでいうと約15%強になります。確かにこれだけ聞くと「たいした財産」ではないようにも思えます。
「ご実家にどんな財産があったかご存じでしょうか。不動産などはありますか?」
「長兄が住んでいる古い実家と、ボロボロのマンションがひとつあるだけですよ」
「ボロボロのマンション」実は山手線の駅近物件だった
相談者のご姉妹は、あくまでも「たいした財産ではない」と思っているようでした。しかし、ヒヤリングを進めていくと、「古い実家」と「ボロボロのマンション」は、東京・山手線の駅近の、とてもいい立地にあったのです。
現在、都内の好立地の地価は上昇が続いています。とくに不動産相場については、オリンピック後には冷え込むという予測がある一方、「都心五区、山手線内」は上昇が続くとの見方もあります。もちろん先のことはわかりませんが、いい条件のそろった人気の高い場所なのです。相談者の方々の相続財産を考えると、決して「たいしたことない」とはいえない、それだけで何年も暮らせる金額になりそうでした。
相談者の方々は私のアドバイスがあるまで、自分の相続した財産の価値に気づいておらず、とても驚いていました。姉妹そろって「目が点」とでもいう状況です。
どういう交渉スタンスを取ったとしても
長男の方から「書いてほしい」と送られてきた書類を見ると、案の定、相続放棄とまではいきませんでしたが、低額のハンコ代の代わりに、事実上相続財産を長男さんに相続させるような内容の遺産分割協議書でした。遺産分割協議書というのは、相続が起きた場合に、相続人間で誰にどういう財産を相続させるかという和解書、協議書のようなものです。
「ごきょうだいで争っては親御さんも喜ばないでしょうし、ことを荒立てたくないというお気持ちはわかりますが…」
筆者はそう前置きしたうえで、話を続けました。
「お父様から相続した財産は、とても大きな価値をもつものです。裁判で争うことはお考えにないと思いますが、ご長男と少し交渉すれば、ご自身の老後資金はもちろん、お子さんに残してあげる財産が増えますよ」
知らないうちに多額の財産を相続していることも?
しかし、お二人はとても驚いたものの、スタンスが変わることはありませんでした。
「まあ、びっくり。そんなに価値があるものとは知りませんでした…」
「でも、弁護士の先生を入れて、兄さんと争うなんて、ねぇ…」
「そうねぇ。もったいないけど、揉めるのはちょっといやよねぇ…」
そのようにおっしゃると、今回の件は「持ち帰り」ということになり、筆者の手を離れてしまいました。あのお二人の雰囲気から、おそらく長兄に促された通り書類に印鑑をつき、提示されたわずかなハンコ代だけを受け取ったと想像しています。
相談者さんの気持ちがいちばん大切ですから、今回の着地もひとつの解決であり、個人的にも、円満・穏便にすむならば、それに越したことはないと思います。
このご姉妹のように、相続人が相続財産の価値に気づいていないケースは少なくありません。今回は相談に見えたことで相続財産の価値を理解されたわけですが、何も知らないまま、親族に促されて印鑑をつき、本来もらえるべき高額な財産をもらい損ねている人もいるのです。
資産には、一見しただけでは価値がわかりにくいものもあります。今回と似たようなケースとして「借金の多い実家の会社の株を相続した」という相談もあります。
会社の株の評価も一筋縄ではいきません。多額の借金を抱えていても、売上が十分あがっていたり、あるいは、特殊な技術等をもっていて大手ファンドからM&Aのオファーがあり、株式の時価総額がとてつもない金額になっている、といった事例はいくつもあります。
人生100年時代となった現在、資産形成の問題にはみんな頭を悩ませています。「どうせたいしたことない」といった思いこみや、「揉めるのはいや」といった一時の気持ちだけで、結論を出してしまうと、将来、後悔することにはならないでしょうか。
もちろん、わざわざ諍いを引き起こす必要はありませんし、すべてを理解したうえで「自分は受け取らなくていい」という判断をするなら、それはそれでいいのです。
もしも相続が発生したら、しっかりと自分の頭で状況を理解し、後悔のない決断をするようにしましょう。それが悔いやしこりを残さない、もっともスムーズな対処法なのです。
(※守秘義務の関係上、実際の事例と変更している部分があります。)
山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦
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