不動産購入、相続の場面で起こる「共有名義」のケース
不動産を共有名義にする典型的なパターンとしては、次のように土地や建物を共同購入するケースや相続のケースがあります。
共同購入のケース
Xさんは、甲土地の購入を検討していました。しかし、甲土地の価格は1億円であり、Xさんの資金力では手が届きません。そこで、Yさんと一緒に資金を出し合って甲土地を購入することにしました。この場合、甲土地はXさんとYさんの共有になり、持分の割合等を登記することになります。
相続のケース
Zさんは父親から実家の乙宅を相続しました。Zさんのほかにも相続人がいる場合、遺産分割が終わるまでは各自の相続分に応じて共有することになります。そして、乙宅が単独所有にならない場合には、その後も共有状態が続くことになります。
親族で土地・建物の持分登記をするケースは非常に多い
実際の共同購入のケースで最も多いのは、夫婦でお金を出し合ったりペアローンを組んだりして自宅を購入する例でしょう。ほかには、親子で2世帯住宅を購入するケース、友人や知人など身内以外の人たちと共同購入する例もみられます。
また、この相続のケースで示したように、親や兄弟などが亡くなった結果、土地・建物を相続し、親族で持分登記をしている例は非常に多くみられます。私の会社で取り扱っている共有名義不動産の大半は、相続により共有となったものです。
民法上「共有」はあくまでも例外扱い
前述の相続のケースで、相続した不動産が相続人の各自の相続分に応じて共有になるのは、共同相続の効力について定めた民法898条が「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定めているためです。
このように、共有に関しては法律でルールが定められていますが、基本的に民法上では、1つのモノに対しては1つの所有権しかない状態を原則(一物一権主義)とする考えを採用しており、共有はあくまで例外とみなされています。そのため、共有関係の解消を促すことを目的とした規定も用意されています。
具体的には、共有者はいつでも共有物の分割を請求できます。土地であれば分筆する、それが難しい場合は、不動産を売却してその売却代金を分割する、といった方法があります。この分割請求の効果として、共有状態は解消されて共有関係が終了します。つまり、各共有者は分割の結果、自己の取得した部分につき単独所有者となります。
なお、共有者全員で、「分割をしない」という不分割の契約(不分割特約)を結ぶこともできます。ただし、不分割の期間は5年を超えることはできません(5年経った後に不分割特約の更新をすることは可能です)。