「一生涯保障」が続く終身タイプの医療保険が人気だが
医療保険について考えてみましょう。
医療保険は、社会人になると同時に加入する人が多い、第三分野の保険です。病気やケガで入院・手術をしたときに、保険金が出ます。入院1日あたりいくらもらえるかが決まっていて、たとえば「日額1万円」という契約になっていれば、1週間の入院で7万円もらえます。
さらに、手術をした場合には、保障の対象となる手術であれば、手術給付金ももらえます。ただし、対象外の手術も結構たくさんあるので、手術をすれば大体給付金がもらえるもの――と考えるのは早計です。
医療保険への加入を希望する場合は、次のような項目をあらかじめ選択したうえで加入することになります。
●期限を決めて入るか、一生保障が続くようにするか
●入院した場合、1日につきいくらもらえるようにするか
●入院何日目から保険金が出るようにするか
●どんな特約をつけるか
人はいつ入院し、手術をすることになるかわかりません。しかし、一般的に入院する可能性が高くなるのは、高齢になってからです。20代、30代で病気になる人よりも、60代、70代で病気になる人のほうがずっと多いことは、さまざまな統計からも明らかです。
そのため、医療保険の期限についていえば、一生涯保障が続く終身タイプを選ぶ人も多勢います。中でも、保障は一生続く一方で、保険料の支払い自体は60~65歳くらいまでに終了する商品が主流です。途中で保障が終わる定期タイプの保険もありますが、今はそれほど人気がありません。
「保険のせいで家計が厳しくなる」本末転倒の地獄絵図
一生保障が続いてほしいと考えるのは、誰もが医療費に強い不安を感じているからでしょう。実際、医療にはお金がかかります。突然大病をし、長く入院することになったら、経済的に苦しくなる――そう考えるからこそ、「保険金はなるべく多いほうが安心」「絶対に入院1日目から保険金が出たほうがいい」などと考える人も増えるわけです。
しかし、保険金が多めに出るように設定すれば、その保険の保険料は高くなります。入院1日目から保険金が出る設定にした場合も、もちろん同じように保険料がかさんでしまいます。保険によっては「入院5日目から保険金が出る」というものもあり、そのほうが保険料は安くなります。
保険の主契約を補って保障内容を充実させる特約も、皆がつけたがります。特約の種類は多種多様です。たとえば、手術給付金の対象外になる手術があると述べましたが、どんな手術でもカバーされ、給付金が出るようにするための特約もあります。
公的健康保険の対象外(つまり、全額自己負担)となる先進医療や、がんの重粒子線治療などに際して、給付金が出る特約もあります。そのほかにも、かゆいところに手が届くような特約は数多くあります。
しかし、特約は無料ではないので、たくさんつけると、やはり保険料が跳ねあがります。保険料の問題ばかりでなく、特約をつけすぎると、契約者自身どんな保障が受けられるかを忘れ、該当する状況になったときに請求漏れを起こしてしまうリスクがあります。
とはいえ、自分の不安な気持ちを優先させようとすると、どうしても保障を厚くしたり、特約をつけすぎたりしてしまいます。その結果、保険料が高くついてしまうのです。
医療に対する保険のかけすぎで、毎月の保険料がかなり高くなっている人もいるでしょう。保険のせいで家計が厳しくなって、使いたいところにお金を使えず、我慢する毎日を送っている人もいます。
保険のために、何十年もそんな我慢を強いられる――「将来のために仕方ない」と思って耐えているのかもしれませんが、そんな人生はいい人生とはいえないはずです。