「宗教活動以外」の収益事業はいずれも課税対象
宗教法人における法人税の課税・非課税は、行なっている事業が、「宗教法人本来の事業」か「収益事業」かが判断基準になります。
本来の事業とは、まさに宗教活動そのもののことです。そうではない収益事業については、たとえ「宗教法人の財政をよくするため」といった理由があっても、課税対象になります。
課税対象とされる事業収入のなかで、「なぜ? 宗教活動と結びついているのでは?」と思われるものもあるでしょう。
具体的に「収益事業」とされるのは、下記の34事業に該当し、事業場を設け、継続して営まれるものです。なお、これらの事業活動の一環として、または関連して行なわれる、いわゆる付随行為も収益事業に含まれます。
[図表]収益事業とされる34事業
収益事業に該当するかどうかの判定基準は?
宗教法人においてよく行なわれていると思われる事業が、収益事業に該当するかどうかの判定は、おおむね次によることになります。
1.お守り、おみくじなど物品の販売
お守り、お札、おみくじ等の販売については、売価と仕入原価との関係からみて、その差額が通常の物品販売業における利益ほどではなく、実質的な喜捨金と認められる場合は収益事業に該当しません。
しかし、宗教法人以外の一般の物品販売業者でも販売されているような性質の物品、たとえば、絵はがき、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花、数珠、集印帳、硯墨、文鎮、メダル、楯、ペナント、キーホルダー、杯、杓子、箸、陶器などを通常の販売価格で販売する場合は、たとえ宗教法人を表徴するような文字や装飾が施されていたとしても、その物品の販売は収益事業(物品販売業)に該当します。
なお、線香やろうそく、供花等の頒布であっても、専ら参詣に当たって神前、仏前等にささげるために下賜するものは、収益事業とはなりません。
2.不動産の貸付け
宗教法人が土地の一部を貸し付けたり、売店や食堂を設けてこれを業者に貸し付けたりしている場合は、不動産貸付業に該当し収益事業として課税されます。
契約更新にともなう更新料も付随的行為に含まれるものと考えられ、不動産貸付業の所得として申告することになります。
ただし、宗教法人が行なう墳墓地の貸付けは、収益事業に該当しないこととされています。これには使用期間に応じて継続的に徴収する地代や、貸付け当初に「永代使用料」として一括徴収する金額も含まれます。
3.境内地等の席貸し
宗教法人の境内地や本堂、講堂等の施設を、多数の人が娯楽や遊興、慰安のために使う目的で「席貸し」した場合、すべて収益事業(席貸業)に該当します。会議、研修等の目的であっても、国や地方公共団体の用に供するものなど一定の要件に該当するものを除き、収益事業に該当します。
4.宿泊施設の経営
宗教法人が所有する宿泊施設に信者や参詣人を宿泊させて宿泊料を受ける行為は、その宿泊料をいかなる名目で受けたとしても、収益事業(旅館業)に該当します。
しかし、宗教活動に関連して利用される簡易な共同宿泊施設で、その宿泊料の額がすべての利用者につき1泊1,000円(食事を提供するものについては2食付きで1,500円)以下となっているものの経営は、収益事業には該当しません。
5.所蔵品等の展示
宗教法人が所蔵あるいは保管の委託を受けた物品等を、常設の宝物館などで観覧させる行為は、収益事業に該当しません。
6.茶道、生花等の教授
宗教法人が茶道教室、生花教室等を開設し、その技芸を教授する場合は、収益事業(技芸教授業)に該当します。
技芸としては、茶道、生花のほか、洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン(レタリングを含みます)などがあります。
なお、これら技芸の教授には、通信教育によるもののほか、免許、卒業資格、段位、級、師範、名取り等、資格や称号だけを付与することも含まれます。
7.駐車場の経営
宗教法人が土地の一部を駐車場として貸し付ける場合は、収益事業(駐車場業)に該当します。
時間貸しで不特定多数の人に駐車させる、月極めで長期間継続して同一人に駐車場所を提供するなど形式による取扱いの区分はありません。駐車場に適する土地を、駐車スペースとして一括してパーキング事業者などに貸し付ける場合も同様です。
不動産貸付業とは異なりますので、国に貸し付ける場合は、区別が必要になる場合もあります。
8.結婚式場の経営
宗教法人が神前結婚・仏前結婚等の挙式を行なうことは、本来の宗教活動の一部と認められ収益事業に該当しませんが、挙式後の披露宴用に宴会場を席貸しすることや、飲食物の提供、衣装等の物品の貸付け、記念写真の撮影などは、これらの斡旋も含め、収益事業に該当します。
「収益事業」に該当する事業に対して課税されるのは、「一般の私企業と競合するような事業については課税の公平上行なう」とする考え方によるものです。ですから、「継続した事業ではない」「金額が少ない」「事業場を設けていない」のであれば、私企業と競合しませんから、課税の対象にはなりません。つまり事業の実体に基づく判断がともなうのです。