米国政治:ねじれない可能性に注意

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12月14日の選挙人投票により、米国大統領選挙はジョー・バイデン氏の勝利が確定した。今後の焦点は、1月5日のジョージア州連邦上院決選投票だ。結果次第で民主、共和両党が上院で同数になり、対立法案はカマラ・ハリス副大統領(上院議長)が1票を投じることになる。その場合、バイデン次期大統領が公約した企業増税などが実現へ向かう可能性が台頭するだろう。

ジョージア州決選投票:上院の枠組みを大きく左右する

11月26日、トランプ大統領は、選挙人投票で敗北すれば「ホワイトハウスを去る」と記者団に明言した。連邦最高裁判所がペンシルバニアなどにおける郵便投票の有効性を実質的に認めた上で、12月14日の選挙人投票においてバイデン氏の勝利が確定した以上、敗北宣言のあるなしに関わらず、選挙結果が覆ることはないと考えるべきだろう。ミッチ・マコネル共和党上院院内総務なども、選挙人投票の結果を受け、バイデン次期大統領の勝利を正式に祝福した。

 

米国の政治の焦点は、1月5日のジョージア州における連邦上院議員の決選投票に移っている。現在、連邦上院は、定数100のうち、大統領与党となる民主党が48議席、共和党は50議席を確定させた(図表)。通常決選投票のみならず、特別決選投票も行われて2議席が選出されるジョージア州の結果が、上院における過半数の行方を決めることになる。

 

出所:各種報道よりピクテ投信投資顧問が作成
[図表]連邦議会の新たな議席 出所:各種報道よりピクテ投信投資顧問が作成

 

連邦議会上院の採決は、法案に対して可否同数の場合、議長が投票する制度だ。上院議長は民主党のハリス次期副大統領が就任するので、ジョージアで民主党が2議席を獲れば、人事案など議長が投票できない採決を除き、民主党が実質的な過半数を確保したことになる。

 

一方、共和党が1議席でも獲ると、同党が過半数に達し、バイデン次期大統領、民主党は共和党議員の少なくとも1名から賛成を得なければ法案を通すことができない。バイデン氏の公約の実現は難しくなり、企業や高額所得者に対する大規模増税などは見送られ可能性が高まるだろう。

市場の盲点:民主党2議席なら大規模増税などに現実味

総選挙前、バイデン氏が勝利し、上院で共和党が過半数を維持した場合、新大統領は議会との政策調整に苦労する結果、米国経済にとりマイナスになると考えていた。しかしながら、市場の受け止め方は違ったようだ。

 

バイデン氏は、民主党内では中道穏健派ながら、リベラル派に配慮、選挙では所得格差是正のためキャピタルゲイン、企業、高額所得者などへの大規模増税を公約した。これは、株式市場にとっては明らかなマイナス材料に他ならない。

 

もっとも、選挙後、下院は民主党、上院は共和党が多数を維持との観測が強まった。従って、バイデン次期大統領は、正式に就任した後、共和党上院議員との妥協を迫られ、経済政策がより穏健なものになることへの期待が高まったと言えそうだ。それが、11月3日以降の株価堅調の要因の1つなのではないか。つまり、「バイデン大統領」の下では、市場は政権と議会とのねじれをむしろ歓迎しているのだ。

 

しかしながら、直近の世論調査では、2議席を決めるジョージア州の決選投票において、いずれも民主党の候補が僅差ながら共和党の現職をリードしている。同州は伝統的に共和党の強い「レッド・ステート」だが、今回は民主党が連邦上院の議席を独占するシナリオがあるかもしれない。

 

バイデン次期大統領は新政権における高官の人事を進めているが、多様性を重視すると同時に、オバマ政権に関わった実務家を中心に人選している印象だ。これについて、民主党内のリベラル系議員などから不満の声が挙がっている。仮にジョージアで民主党が上院の2議席を得れば、公約を実現する条件が整うため、政権を安定させる上でも、増税策などを具体化に移す可能性が台頭するだろう。

 

ジョージア州の決選投票の行方は未だ混沌としている。ただ、マーケットは、これまで、連邦上院では共和党が過半数を維持するとの前提で動いてきたのではないか。だとすると、年明け早々の市場に向けては、この選挙が意外な盲点になる可能性に注意が必要と言える。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国政治:ねじれない可能性に注意』を参照)。

 

(2020年12月18日)

 

 

市川 眞一

ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。
著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。
2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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