20年12月FOMCレビュー~量的緩和のガイダンスを強化

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●量的緩和は完全雇用と物価安定の達成に向け十分な進展があるまで継続と声明に明記された。

●ドットチャートに大きな変化はなく、メンバーの大半は2023年末までゼロ金利維持が適切との見方。

●量的緩和の更なる強化の期待もあったがパウエル議長が政策の柔軟性を示し市場の失望は回避。

量的緩和は完全雇用と物価安定の達成に向け十分な進展があるまで継続と声明に明記された

米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月15日、16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0.00%~0.25%で据え置き、ゼロ金利政策の維持を決定しました。また、国債と住宅ローン担保証券(MBS)の買い入れについても、現行のペースが維持されることになりました。以下、主なポイントを確認していきます。

 

まず、FOMC声明では、量的緩和政策に関するフォワードガイダンスが強化されました。具体的にみると、国債などの買い入れ継続期間は、これまでの「今後数ヵ月」から、「完全雇用と物価安定の達成に向けてさらに顕著な進展があるまで」に変更されました。また、現在、国債は月800億ドル、MBSは月400億ドルのペースで買い入れが実施されていますが、これらの数字が声明に明記されました。

ドットチャートに大きな変化はなく、メンバーの大半は2023年末までゼロ金利維持が適切との見方

FOMCメンバーの経済見通しでは(図表1)、実質GDP成長率(10-12月期の前年同期比)が2020年から2022年は上方修正、2023年は下方修正されましたが、失業率(10-12月期平均)は各年改善方向に修正されました。個人消費支出ベースの物価上昇率は、2021年と2020年が上方修正となりました。なお、長期均衡水準は、実質GDP成長率が1.9%から1.8%へ下方修正、失業率は4.1%、物価上昇率は2.0%で据え置きとなりました。

 

(注)2020年12月16日時点の見通し。前回は2020年9月16日時点。実質GDP成長率は10-12月期の前年同期比。失業率は10-12月期平均。物価上昇率は個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率。長期はFOMCメンバーが考える長期均衡水準。 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]FOMCメンバーの経済見通し (注)2020年12月16日時点の見通し。前回は2020年9月16日時点。実質GDP成長率は10-12月期の前年同期比。失業率は10-12月期平均。物価上昇率は個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率。長期はFOMCメンバーが考える長期均衡水準。
(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)は、前回9月からほとんど変化はありませんでした。2023年末の政策金利水準について、9月時点では、17人のメンバーのうち13人がゼロ金利政策の継続が適切との見方を示し、4人は少なくとも1回以上の利上げが適切との見方を示していましたが、今回はゼロ金利政策継続派が12人、利上げ派が5人となりました。

量的緩和の更なる強化の期待もあったがパウエル議長が政策の柔軟性を示し市場の失望は回避

パウエル議長はFOMC後の記者会見で、景気の先行きについて、極めて不透明で不確実性が高く、この先どうなるかはコロナの感染状況次第と述べ、慎重な姿勢を示しました。ただ、政策に関し、資産購入は必要に応じて購入額の調整など柔軟な選択肢があり、購入規模縮小の可能性は現時点で低いとの考え方を示すなど、ハト派的なメッセージを市場に送りました。

 

総じて今回のFOMCは予想の範囲内と考えますが、市場では、量的緩和について購入資産の平均年限長期化など、もう一段の強化を見込んでいた向きもありました。そのため、声明発表後は、米長期金利上昇、米ドル高、米株安の反応がみられましたが、パウエル議長の会見後は落ち着きを取り戻しています(図表2)。市場はFOMCの結果を受け、FRBは当面現行の政策の枠組みを維持し、必要に応じて緩和に動くと解釈したものと思われます。

 

(注)データは2020年12月16日22:00から12月17日6:55。日時は日本時間。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米10年国債利回りとドル円レート (注)データは2020年12月16日22:00から12月17日6:55。日時は日本時間。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『20年12月FOMCレビュー~量的緩和のガイダンスを強化』を参照)。

 

(2020年12月17日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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