日米欧の株式市場が織り込む企業業績の回復度合い

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●日本では今後1年で予想EPSの33.6%の伸びが見込まれ大幅な業績改善が織り込まれている。

●米国でも2021年は企業業績が明確に改善する見通しで主要500社のEPSは20%超の伸びに。

●欧州も同じ傾向、ただ日米欧の株価に反映済みで、株高継続には業績の新たな好材料が必要。

日本では今後1年で予想EPSの33.6%の伸びが見込まれ大幅な業績改善が織り込まれている

今回のレポートでは、足元の株式市場で、企業業績の回復度合いがどの程度織り込まれているのか、日米欧それぞれについて確認していきます。はじめに、日本について、11月16日時点で集計した3月期決算企業1,330社の今年度通期業績予想をみると、前年度比で売上高は-9.4%、営業利益は-31.3%、経常利益は-30.3%、純利益は-32.4%と、新型コロナウイルス感染拡大の影響が、強く残る数字が示されていました。

 

ただ、東証株価指数(TOPIX)に関し、アナリストによる業績予想の傾向を示す「リビジョン・インデックス」に目を向けると、足元では+14.7%と、業績予想を上方修正した銘柄の比率が大きくなっています(図表1)。また、今後1年で、予想1株当たり利益(EPS、Earnings Per Share)は+33.6%の伸びが見込まれていることから(図表2)、企業業績はすでに底を打ち、この先、大きく回復するとの見方が市場に織り込まれていると解釈できます。

 

(注)データは2018年12月5日から2020年12月9日。東証株価指数(TOPIX)構成銘柄について、アナリストが業績予想を上方修正した銘柄の比率が多ければ数値が大きくなり、下方修正した銘柄の比率が多ければ数値が小さくなる。 (出所)Datastreamのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]リビジョン・インデックスの推移 (注)データは2018年12月5日から2020年12月9日。東証株価指数(TOPIX)構成銘柄について、アナリストが業績予想を上方修正した銘柄の比率が多ければ数値が大きくなり、下方修正した銘柄の比率が多ければ数値が小さくなる。
(出所)Datastreamのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2020年12月9日時点。過去1年の変化率はEPS実績、今後1年の変化率はアナリストの予想EPS。 (出所)Datastreamのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日米欧のEPS変化率 (注)データは2020年12月9日時点。過去1年の変化率はEPS実績、今後1年の変化率はアナリストの予想EPS。
(出所)Datastreamのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

米国でも2021年は企業業績が明確に改善する見通しで主要500社のEPSは20%超の伸びに

次に、米国についてみていきます。12月15日時点で、S&P500種株価指数の11業種のうち、2020年にEPSの伸び率が前年比プラスでの着地が市場で見込まれているのは、生活必需品(前年比+2.0%)、ヘルスケア(同+7.2%)、情報技術(同+6.5%)、公益事業(同+1.5%)の4業種のみにとどまっています。また、S&P500種株価指数全体では同-15.2%となっています。

 

ただ、2021年は業績が明確に改善し、S&P500種株価指数の11業種全てが前年比でプラスとなる見通しです。軒並み2ケタの伸び率が予想されており、1ケタにとどまるのは、生活必需品(前年比+6.2%)、不動産(同+7.7%)、公益事業(同+4.6%)の3業種のみです。最大の伸びが見込まれるのは、エネルギー(同+648.2%)ですが、これは前年(同-108.3%)の反動によるところが大きく、S&P500種株価指数全体では同+22.7%となっています。

欧州も同じ傾向、ただ日米欧の株価に反映済みで、株高継続には業績の新たな好材料が必要

最後に、欧州の状況を確認します。欧州主要600社の株価指数であるストックス600について、直近のEPS実績は、1年前からの-36.8%と大きく悪化していますが、今後1年の予想EPSは、+39.0%の伸びが市場で見込まれています。同様に、ドイツ株式指数(DAX)とFTSE100種総合株価指数のEPSは、この1年でそれぞれ-19.0%、-44.8%となった一方、今後1年では+32.2%、+45.5%の急回復が予想されています。

 

このように、日米欧の株式市場は現在、この先1年で企業業績が大きく回復するとの見方を織り込んでいることが分かります。ただ、前述の主要株価指数は、3月につけた年初来安値から12月15日まで、いずれも30%を超えて上昇しており、株価にも業績改善はすでに反映済みということになります。そのため、主要株価指数が春先からの強い上昇基調を維持するには、更なる業績改善を期待できる新たな材料が必要と考えます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日米欧の株式市場が織り込む企業業績の回復度合い』を参照)。

 

(2020年12月16日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、総勢14名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場についての運用会社ならではの高度な分析を社内外に情報発信しています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約800本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2019年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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