日本には「知らぬが仏」という言葉がある通り、秘密にすることによって穏便に事を済ませようとする文化がありますが、相続が発生すると状況は一変します。実際、富裕層の間では、まさに昼ドラのようなドロドロの相続トラブルが発生しているのです。新月税理士法人の佐野明彦氏が事例を紹介し、対策法を解説します。※毎年恒例、幻冬舎ゴールドオンラインの相続特集が開幕! 最新情報から大人気記事のピックアップまで、盛りだくさんでお届けします。

認知したことを知られたくない人の手段…なんと!

認知をすると父子ともに戸籍の表記が変わります。子供の戸籍には「父」の欄に認知した男性の名前が入り、父の戸籍には下記のような記述が加わります。

 

「平成○年○月○日 ○市 ○番地 木下華子同籍義男を認知届出」

 

このため、もし家族が戸籍を閲覧する機会があれば、認知した隠し子がいることがわかってしまいます。ただし、この一文は転籍(戸籍を別の住所に移す)などにより新しく戸籍を作り直した時には記載されなくなります。

 

あまり知られていませんが、戸籍は実在する場所であれば、日本中どこでも好きな場所に移すことができます。自分とはまったく関係がなくても、六本木ヒルズや田園調布のお屋敷を本籍地にすることが可能なのです。わざわざそんな場所にするのは不自然ですが「我が家のルーツである本家の場所に本籍を移したい」など、適当な理由を付けて転籍することは可能です。

 

費用はほとんどかかりませんから、家族にどうしても知られたくないなら転籍の手続きをとることで、転籍した後の戸籍を見るだけでは隠し子の存在を知ることはできなくなります。ただ、転籍しても戸籍の見かけが変わるだけなので、以前の戸籍を遡れば、認知した子供がいることは判明します。

 

社長が亡くなり相続が発生すると、法定相続人を特定するため社長の出生から全ての戸籍を入手します。最終的に法定相続人全員の合意がなければ、法的に相続が正しく完了したと認められないためです。

 

大きな額の相続ではほとんどの場合、税理士や弁護士などの専門家が依頼されて実務を引き受けます。遺産分割を決めた後に、隠し子など把握していなかった法定相続人がいたことが判明すると、遺産分割作業がやり直しとなります。そのため相続が発生したら、まず相続人を特定するために全ての戸籍を出生時まで遡って調べるのです。

 

認知している子供がいることはその過程で明らかになるので、転籍はそれまでの一時しのぎと考えておくべきです。

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妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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