「妻に大事な宝を捨てられたくない」困った社長は…
久しぶりに受けた健康診断で頭部に動脈瘤が見つかったのだ。医師は手術をすれば治ると言いながら、大きな手術だけに危険性はあると付け加えた。
十津川社長にとって心配なのは骨董品のことだ。もしものことがあったら、妻はその存在に気づくだろう。その場合には腹立ちまぎれにまた捨てようとする可能性が高い。どうせなら同じ趣味を共有する仲間に贈りたいが、価値の高いものだけに死因贈与すれば、相続税の申告書に記載されてしまい、結局は妻に知れてしまう。「奧さんに乗り込まれるのは嫌だよ」と趣味仲間は逃げ腰だ。
医師には早めの手術をすすめられているが、十津川社長の悩みは深い。
対策1:別会社を立ち上げてコレクションを持たせ骨董品仲間を共同経営者にする
十津川社長の場合は骨董品ですが、他にも高級腕時計や高級車、ヨットなどお金のかかる趣味を持っている社長の相続では同じ問題が発生します。捨ててしまうことはないにしても、価値のわからない妻が相続すると、自分の愛するモノたちがどう扱われてしまうか――と心配になるはずです。趣味の仲間に死因贈与しても、申告義務が発生し妻にはわかってしまいますので、受け取った仲間に迷惑がかかることもあるでしょう。
この悩みを解決する方法としても有効なのが会社を立ち上げることです。十津川社長のケースなら、骨董品を販売する会社を作り、その会社がコレクションの所有者になるのです。
その上でもしもの時にはその会社の株式を贈与する「死因贈与」の契約を骨董品仲間と交わしておきます。株式化しておけば、個別に財産を移転するより簡単に移転できます。相続にあたり、妻も「事業に関わること」と会社の事業内容の詳細を調べる可能性は低いでしょう。
相続税の負担が大きくならないよう、骨董品仲間にあらかじめ暦年課税方式の贈与で対応しておくか、株式の評価を下げる対策をとっておく必要があります。株価対策にはいろいろな方法がありますので、税理士に確認して進めましょう。
先々は仲間たちがコレクションを引き継ぎ守ってくれることがわかっていれば、十津川社長も安心してまだまだ趣味を楽しめるでしょう。
対策2:事業性がない高級腕時計の蒐集には「古物商許可」が有効
骨董品と同じく社長が趣味としてよく蒐集しているものに高級腕時計があります。一つ数百万円から高いものでは1000万円を超えるものまであり、ステータスを示すアイテムとしても人気が高いものです。妻からは「無駄遣い」ととられることも多いので、隠してこっそり蒐集している社長も見受けられます。