大学病院の教授の権威は失墜し、もはや野心溢れる若手医師が目指す存在ではなくなったという。健康診断や当直などのアルバイトで食いつなぐフリーター医師も出現した一方で、『ドクターX』で有名になった、専門的なスキルを売りにして腕一本で高額な報酬を得るフリーランス医師は、病院にとって不可欠となっています。100以上の病院を渡り歩いた現役麻酔科医が知られざる医療の現場、医師たちの本音を明かします。本連載は筒井冨美著『フリーランス女医は見た医師の稼ぎ方』(光文社新書)の一部を抜粋、再編集したものです

都市部のブランド病院でも「医師集団辞職」の報道が

ネットによって教授の権威が衰退

 

また、インターネットの発達も医局衰退の一因となった。かつての医大教授は、人事権のみならず医者の就職情報も一手に握っており、教授に逆らえば当直アルバイト一つ見つけることは困難だった。

 

ネットやら携帯電話やらスマホの発達、および大学医局における医師派遣機能の衰退を背景に、民間の医師転職業者が多数誕生した。こういった業者の多くは、Eメールで医師アルバイトも紹介してくれる(上写真)。教授に逆らって大学病院を辞めても、経済的に困窮することはなくなった。教授が出向を命じた病院が気に入らなければ、ネットで転職エージェントを探し出して、もっと自分の希望に合致した病院を紹介してもらうことも可能になった。数少ない実働部隊でもある若手~中堅医師は、もはや従順な召使ではなくなってしまい、同時に教授も王様ではなくなった。

 

「このまま滅私奉公しても、先輩のように報われる保証はない」「下手すると、一生この生活?」と中堅医師は思い始めた。大学病院から若手医師が消え、次に中堅医師がソルジャー生活に見切りをつけて去っていった。大学病院のみならず、2007年には国立循環器病センター、08年には国立がん研究センター中央病院、といった都市部のブランド病院においても「医師集団辞職」が報道されるようになった。

 

12年に第1作が放映された『ドクターX』は、「大学病院における医師集団辞職」から物語が始まる。「新研修医制度……あれは失敗だった」と大学病院院長(伊東四朗)も、ドラマの中で苦々しく語った。

 

筒井冨美

フリーランス医師

 

 

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方

フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方

筒井 冨美

光文社新書

大学病院の教授の権威は失墜し、野心溢れる若手医師が目指す存在ではなくなった。 いま、封建的で年功序列の組織に飛び込んで行っても、将来のポストの保証はない。その代わりに、医師たちは将来のキャリアに役立つ都心のブラ…

女医問題ぶった斬り!女性減点入試の真犯人

女医問題ぶった斬り!女性減点入試の真犯人

筒井 冨美

光文社新書

東京医大の入試不正事件をきっかけに明るみ出た、女性の医学部受験者への減点操作。「女性差別だ」の声の一方で、「必要悪」「長年の公然の秘密」との声も多かった。医学部人気が過熱し、女性の志願者も増える現在、なぜ「女医…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録