都市部のブランド病院でも「医師集団辞職」の報道が
ネットによって教授の権威が衰退
また、インターネットの発達も医局衰退の一因となった。かつての医大教授は、人事権のみならず医者の就職情報も一手に握っており、教授に逆らえば当直アルバイト一つ見つけることは困難だった。
ネットやら携帯電話やらスマホの発達、および大学医局における医師派遣機能の衰退を背景に、民間の医師転職業者が多数誕生した。こういった業者の多くは、Eメールで医師アルバイトも紹介してくれる(上写真)。教授に逆らって大学病院を辞めても、経済的に困窮することはなくなった。教授が出向を命じた病院が気に入らなければ、ネットで転職エージェントを探し出して、もっと自分の希望に合致した病院を紹介してもらうことも可能になった。数少ない実働部隊でもある若手~中堅医師は、もはや従順な召使ではなくなってしまい、同時に教授も王様ではなくなった。
「このまま滅私奉公しても、先輩のように報われる保証はない」「下手すると、一生この生活?」と中堅医師は思い始めた。大学病院から若手医師が消え、次に中堅医師がソルジャー生活に見切りをつけて去っていった。大学病院のみならず、2007年には国立循環器病センター、08年には国立がん研究センター中央病院、といった都市部のブランド病院においても「医師集団辞職」が報道されるようになった。
12年に第1作が放映された『ドクターX』は、「大学病院における医師集団辞職」から物語が始まる。「新研修医制度……あれは失敗だった」と大学病院院長(伊東四朗)も、ドラマの中で苦々しく語った。
筒井冨美
フリーランス医師
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