大学病院の教授の権威は失墜し、もはや野心溢れる若手医師が目指す存在ではなくなったという。健康診断や当直などのアルバイトで食いつなぐフリーター医師も出現した一方で、『ドクターX』で有名になった、専門的なスキルを売りにして腕一本で高額な報酬を得るフリーランス医師は、病院にとって不可欠となっています。100以上の病院を渡り歩いた現役麻酔科医が知られざる医療の現場、医師たちの本音を明かします。本連載は筒井冨美著『フリーランス女医は見た医師の稼ぎ方』(光文社新書)の一部を抜粋、再編集したものです。

東北、北海道なら年収2000万~3000万円も

勤務医の年収とは

 

2015年、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、全医師の平均年収は1098万円(平均40歳)であり、同調査では弁護士(1094万円)、公認会計士(717万円)、歯科医師(653万円)、薬剤師(532万円)、看護師(478万円)などを抑えて、全資格中トップとなった。「えっ、こんなものなの?」と驚くのは早すぎる。

 

この数字は、研修医や大学院生や非常勤ママ女医も含まれている。2013年、日経メディカルオンラインの調査では、「勤務医の平均年収1477万円(平均年齢46歳)」とあり、こちらのデータの方が「(研修医や大学院生やパート女医を除いた)フルタイム勤務医の平均年収」を反映しているように思う。

 

地方で中小の方が給料大

 

日本における労働者の収入は、ざっくり言って「都会>田舎」「大企業>中小企業」「公務員>民間企業」「有名企業>無名企業」といわれるが、これが全て逆になるのが勤務医の給料の特徴である。東京都が日本一低く、僻地が高い。大学病院や巨大病院では低く、中小病院が高い。国公立では低く、民間病院が高い。

 

そして「虎の門病院」「聖路加国際病院」のようなブランド病院では低く、無名の病院では高い。前述の「賃金構造基本統計調査」では、全国平均1098万円に比べて、東京都902万円(同39歳)、「職員数1000人以上の大病院」では825万円(同36歳)、「10~100人の中小病院」では1709万円(同52歳)となっている。

 

勤務医の給料は大学病院や巨大病院では低く、中小病院が高い。国公立では低く、民間病院が高い。そして「虎の門病院」「聖路加国際病院」のようなブランド病院では低く、無名の病院では高いという。(※写真はイメージです/PIXTA)
勤務医の給料は大学病院や巨大病院では低く、中小病院が高い。国公立では低く、民間病院が高い。そして「虎の門病院」「聖路加国際病院」のようなブランド病院では低く、無名の病院では高いという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

要するに、人気病院の給料は低くても医者が集まるので低いままだが、不人気病院で医者を集めるには高給で代償しなければならないのだ。「イケメンのモテ男は、電車や牛丼デートで俺様キャラでも、女性が途切れない」が、「非モテ男は、外車や高級レストランを活用してマメに尽くして、やっと女性が確保できる」というような現象だろう。

 

東京都内の40代フルタイム勤務医ならば、大学病院だと600~800万円(+アルバイト)、公立病院やブランド病院で1000万~1500万円、ノーブランド民間病院1500万~2000万円、医師不足科(産科、救急救命など)でガッツリ当直すれば2000万~3000万円、が一つの目安である。それ以上を稼ぐには「美容外科」「レーシック(近視)手術」「AGA(薄毛)外来」などの自由診療か、あるいは医師不足地域に転職することになる。

 

東北の非県庁所在地ならば、一般内科でも年収2000万~3000万円は可能だし、北海道北東部に行けばさらに高額が可能になる。

 

2006年に、「三重県尾鷲市の産科医の年俸が5520万円」と報道されたことがあるが、「医師不足科の僻地勤務」だと、このレベルの報酬は今でも可能である。よって、「子供が医学部を目指して2浪、成績がビミョ~なので私立医大専門予備校で特訓中」「株の信用取引で大負」「開業したけど経営破綻」「女性問題で離婚係争中」のようなワケあり医師が、「妻子を東京に残して、僻地病院に単身赴任」というのはよく聞く話である。

 

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フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方

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筒井 冨美

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