職場で転んで骨折…会社が労災を認めてくれないケース
Q.「職場で荷物を運んでいて階段で転倒し、足の骨を折る重傷を負った。治療費がかかるため、会社に労災申請を頼んだが、『転んだあなたが悪い』と言って申請をしてくれない。」
⇒労災は自分で労働基準監督署に申請します。申請書には、会社に労災が生じたことを証明する記載をしてもらう必要があります。会社には証明に応じる義務がありますが(労働者災害補償保険法施行規則第23条第2項)、会社が応じない場合は、労働基準監督署にその旨を伝えて相談をしましょう。
<会社が労災を認めてくれない場合>
会社が労災と認識しながら、意図的に労災を隠そうとするのは犯罪行為で(労災隠し)、処罰の対象になります。
ただ、客観的に労災かどうか判断が難しい場合もあります。たとえば、長時間労働や上司のパワハラなどでうつ病を発症した場合などです。
いずれにしても、会社が労災の申請をしてくれない、協力してくれないときには、労基署に相談し、会社の証明なしで申請をする方法について指示を受けましょう。
「労災」とは、「労働災害」の略で、仕事上や通勤途上でけがをしたり、病気になったりすることです。このような場合、けがをした人や病気になった人、またはその遺族は、給付金を受け取ることができます。
一人でも人を雇う事業者は「労働災害補償保険」という保険に強制加入させられて、保険料を支払います。その保険から、労災が生じたときに労働者が給付金を受け取ります。
労災には、以下の2種類があります。
①業務災害…仕事をしている最中のけがや死亡
②通勤災害…通勤している最中のけがや死亡。ただし、別の用事などで遠回りしている最中のけがや病気は給付金の対象外になる場合があります。
労働者が受け取れる給付金の種類
給付金には、以下の種類があります。
●療養給付金(通勤時)・療養補償給付金(業務時)
けがや病気になったときの療養費を給付してもらえます。
●休業給付金(通勤時)・休業補償給付金(業務時)
けがや病気で働けなくなった場合に給与の60%または80%を給付してもらえます。
●遺族給付金(通勤時)・遺族補償給付金(業務時)
けがや病気で亡くなった場合に、遺族が一時金や年金をもらえます。
●葬祭給付(通勤時)・葬祭料(業務時)
けがや病気で亡くなった場合に、葬儀費用の給付を受けられます。
●障害給付金(通勤時)・障害補償給付金(業務時)
けがや病気で後遺障害が生じたときに、一時金や年金をもらえます
●介護給付金(通勤時)・介護保障給付金(業務時)
障害により介護を受けているときに、介護費用の支払いを受けられます。
●二次健康診断等給付金
会社の定期健康診断で、過労死につながる脳や心臓の病気が見つかった場合に、2回目の健康診断や保健指導の費用を給付してもらうものです。
<関連条文>
【労働者災害補償保険法施行規則】第23条 事業主の助力等
1 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続きを行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。
2 事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長
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