相続人が未成年だから、まわりの大人がサポート…。そんな状況下だから起きる相続トラブルがあります。相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が、編集部に届いた相続にまつわる争いについて解説します。

 

そこには、祖父から相続した車の姿はありませんでした。Aさんに行方を聞こうとしましたが、連絡なしに来てしまったので、家には誰もいません。しかたなく、Aさんの帰宅を待つことに。

 

夜、帰宅したAさんは、Kさんの姿に驚きの様子。

 

「どっ、どうした突然」

 

「ごめん、突然来ちゃって。俺も20歳になったし、車、取りに来たんだ。車、どこにあるの?」

 

「……ないんだ」

 

「えっ?」

 

「売ったんだ、車」

 

「えー!」

 

Aさんに事情を聞くと、先日、お金が急に必要になり、売ってしまったというんです。

 

「きちんとお金で返すから」というAさんですが、「祖父の車でないと意味がない」と怒り心頭のKさんだったといいます。

 

おいー勝手に何してる!(※画像はイメージです/PIXTA)
おいー勝手に何してる!(※画像はイメージです/PIXTA)

解説:車の所有者は誰だったのか?

Kさんはおじいさんの遺言によって、車を正式に取得しています(名義がどうなっていたかは分かりませんが、法的な所有者はKさんになります)。

 

車の売買の契約は、所有者であるKさん本人、または権限を委託された代理人しかできません。なお、Kさんが未成年であった場合は親が法定代理人親権者として売買契約を行うことになります。

 

どのような手続を経てAさんが勝手に車を売却したかは不明ですが、権限がない人間が行った売買契約については、その者に対して不法行為として損害賠償を請求することができます。

 

また、権限がない人間が行った売買契約の相手方(買手側)も、車がKさんの所有物で、Kさんが売却を承諾していないことを知っていながら購入していた場合には、不法行為責任を問われる可能性もあります。

 

上記の通り、訴えによって車の売却代金は取り戻せる可能性が高いですが、残念ながら、車そのものを取り戻せるかは、車の現況によるため不確実と言えるでしょう。

 

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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