おじいちゃん子だった孫に高級車を相続
遺言書には事細かに遺産分割について書かれていて、兄妹にとっても何一つ不満の残らないカタチでした。
「九州の実家近くにある不動産は、九州に住んでいるふたりの兄に、その分、私には現金を多めに……公平な配分で、遺産分割はすんなりと終わりました。あとひとつ、Kにプレゼントがあったんです」
そのプレゼント、というのが、冒頭にあった車。Kさん、無類の車好きだったこともあり、遺言書にはまだ購入して間もない高級車をKさんに相続すると書かれていたのです。
「Kは特別な存在だったことは親戚もみな知っていたので、Kが車を相続することに、特に異論はありませんでした」
こうしてKさんに新車同然の高級車が相続されることになったのです。
「Kはまだ中学生だから、この車はあなたが20歳になるまで、大人が管理しておくからね」
しかし問題は、車の保管場所。Cさんの自宅には、余分に車を置いておけるスペースはなかったのです。新たに駐車場を借りるのも……と結論はすぐに出ませんでした。
「Kが車を運転できるようになるまで、親父の家に置いておけばいいよ」
そう言ってくれたのは、祖父の家を相続したAさんでした。「そうしてくれるなら、お言葉に甘えて」と、Kさんが免許を取得し、成人になるまで、祖父から相続した車はそのまま祖父の家(=Aさんが相続)に置いておくことになったのです。
20歳を迎え、意気揚々と祖父の車を取りに来たら……
祖父から高級車を相続したKさん。祖父が亡くなってから、長い休みがあると九州まで遊びに行っては車を見に行ったといいます。
「いざ乗れるようになったとき、きちんとメンテナンスしていなと。おじいちゃんにも怒れれちゃう」
こうして月日は流れ、Kさんは免許を取得。そして成人を迎えました。
「やっとおじいちゃんの車を運転できる!」と、大学が休みになるタイミングで、Aさんの家(=相続した実家)に車を取りにいくことにしました。そしてAさんの家のガレージを意気揚々と開けたのです。
ガラガラガラガラー
「あれ、俺のベンツは?」