相続した不動産を売却した際、ちゃんと税金を申告したつもりが、税務署から指摘を受け、 追徴課税をかせられる場合があります。相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が、その理由を説明します。

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過去に「買換特例」を適用した場合には注意が必要

不動産を売却した際は、次の計算方法により譲渡所得が出る場合には所得税の申告や納税が必要になります。

 

【計算方法】売却代金−取得費−譲渡費用

 

売却代金や譲渡費用(仲介手数料等)は売却時に発生する入出金のため金額は明らかですが、取得費については不明であることが少なくありません。

 

今回は、特に相続した不動産を売却する場合における取得費に着目してお話をします。

 

まず、次のような事例の場合、子が相続した不動産を売却した際の譲渡所得計算上の取得費はいくらになるでしょうか。

 

[昭和30年]
祖父、500万円でA不動産を購入

[昭和50年]
祖父から父にA不動産を引き継ぎ

[平成10年]
父、A不動産を2,000万円で売却し、B不動産を2,000万円で購入

[令和2年]
父から子へB不動産を引き継ぎ
子、B不動産を3,000万円で売却

 

答えは「父が自宅不動産を買い換えた際に、所得税の買換特例の適用を受けているかどうか」によります。

 

特定のマイホームを買い換えたときの特例

居住期間が10年以上であることなどの一定要件を満たすマイホームを売却し、その売却代金を元手に新たなマイホームを購入した場合には、本来税金の対象になる譲渡益が繰り延べられる特例です。

 

たとえば上記の事例ですと、父が平成10年にA不動産を売却した際には、譲渡益1,500万円(2,000万円−500万円。説明を簡潔にするため譲渡費用は考慮しません)が所得税の対象になりますが、同年に売却代金を元手に同額のB不動産を購入していますので、翌年の確定申告において買換特例の適用を受ける申告をすることにより、譲渡益1,500万円への課税は将来B不動産を売却するときまで持ち越されることになります。

 

すなわち、買換特例の適用を受けた場合、令和2年に子がB不動産を売却した際の譲渡益は1,000万円(3,000万円−2,000万円)ではなく、これに繰り延べられた1,500万円を加えた2,500万円になるということです。

 

もし、A不動産の取得費が引き継がれていることを知らずに譲渡益1,000万円に対してのみ申告をした場合には、言うまでもなく税務署からの指摘により追徴課税を受けることとなってしまいます。

 

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