2019年、実に40年ぶりに改正となった相続法。これまで相続の現場で起きていた不都合を改善するための改正でしたが、すべてが完璧というわけにはいきません。そこには想定しておくべき、相続の落とし穴も……。相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の北川聡司税理士が解説します。

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遺留分が払えないから、山林を売却しようと…

残された7,500万円の不動産が容易に換金できるようなものであれば問題はなかったのですが、自宅は長男が住み続ける予定のため売却できず、貸宅地も借地人での購入が難しそうな状況です。売却するのは山林ということになりました。

 

ところが、この山林は市街化区域にあるものの、不動産取引自体が多くない郊外の土地で容易に売却できない土地でした。相続から1年が経過し、今も購入者を探している状況です。仮に購入を希望する業者が現れたとしても、今後の整備費用などを考慮してどの程度の金額になるのか、長男さんは先行きが不安でならないでしょう。

 

遺留分自体は時価により計算するため、相続税評価額で計算するものではありませんが、売却が困難な土地であってもその評価額がゼロ円というわけにはいきません。時価が安いことを証明するために鑑定するにもその費用が新たなコストとなり、メリットが生じるのかを検討する必要があります。

 

■ まとめ

今回の事例であれば、処分に困る山林の一部を二男に相続させる遺言を残して遺留分が生じないようにしていれば長男が困窮することはありませんでした。

 

長男には父の葬儀費用、相続税、税理士費用、不動産の名義変更費用、(鑑定する場合には)鑑定費用、弁護士費用、山林を売却した場合の譲渡税など、遺留分として支払う金銭以外の負担も重くのしかかります。

 

同居してきた長男を思って「すべての財産を相続させる」という内容の遺言を残されているケースは多くあることですが、遺留分制度改正の影響から財産構成によってはそれが仇となるケースも今後ますます出てきそうです。

 

改正は2019年7月1日以降の相続からですので、すでに遺言を作られている方は遺言の書き換えが必要かを確認(必要に応じて書き換え)し、これから遺言書を作成する方は遺留分を「金銭」で支払うことを前提として作成する必要があるのではないでしょうか。

 

 

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