「聞きにくいけど、麻酔って途中で起きないの?」に医師の答え

「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

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病棟業務

外科医の仕事は手術だけではない。手術があれば術前術後の患者さんがいるわけで、手術前後に責任を持つのが外科医の使命である。

 

緊急などの場合を除いて、患者さんは手術の数日前から前日に入院する。僕はまだ外来を担当していないため、患者さんが入院してきた日に初顔合わせとなる。

 

「失礼します」

 

病室のドアをノックして中に入る。

 

(どんな人なんだろう)

 

初対面の瞬間はいつも緊張する。患者さんについての基本的な情報は事前にカルテで確認している。年齢、性別、仕事、家族構成、身長、体重、手術に至った経緯などあらゆる情報を集めて、その患者さんの人物像をイメージする。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、人となりは実際に会って話してみないと分からない。

 

「初めまして、外科の山川です。入院中、担当させていただきますのでよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「明日が手術ですね。体調はいかがですか」

「特に変わりないです」

「それは良かったです」

 

ここまではお決まりの会話である。この最初の会話で表情や口調を観察して、患者さんのキャラクターを見極める。

 

品のある人、神経質な人、病院嫌いな人、お喋り好きな人など、なんとなくキャラが浮かび上がってくるものである。キャラクターはさまざまだが、全ての患者さんに共通していることがある。それは不安を抱えているということだ。

 

不安を全面に出す人も、強がっている人も、平静を装っている人も、多かれ少なかれ不安を抱えている。僕はこの不安を少しでも和らげようと次の言葉を繰り出す。

 

「お孫さんですか?」

 

病室に置かれていた写真を見て尋ねる。

 

「そうです。来年の4月に小学校に上がるんです」

「元気になって入学式に行けたらいいですね」

「行けるかな?」

「きっと大丈夫ですよ。こうして座っている姿勢もすごくいいし、乗り切れる体力は十分にありますよ」

「最近、ヨガ教室に通い始めたの」

「それで姿勢がいいんですね」

 

患者さんの所持品や立ち振る舞いなど細かいところまで見逃さないように心がける。ちょっとしたことが会話のきっかけになり、患者さんとの距離が一気に縮まることもある。人と関わる上で相手を知ることはとても重要だ。

 

「先生は何年目?」

「3年目です」

「まだ医者になりたてか」

 

患者さんの中には、若い医者が担当医ということで不安や不満を持つ方もいる。これは仕方がないことである。

 

僕も逆の立場だったらたぶんそう思うだろう。ただ、そんな中で少しでも僕が担当で良かったと思ってもらえるように、患者さんには丁寧に接するよう心がけた。

1991年生まれ。消化器外科医。趣味はプロ野球観戦だが、今は手術の修練や日々の予習・復習に追われており、久しく球場に足を運べていない。ほとんどの時間を仕事に捧げているが決してデキる外科医というわけではない。そんな不甲斐ない自分をいつも励ましてくれるのがもう一つの趣味である小説である。小説の中で頑張っている主人公に出会うと「僕ももう一度頑張ってみたい、頑張れる気がする」と思えてくる。僕もそんな魅力的な主人公を描いて、医師として人の命を、小説家として人の心を支える存在になりたい。

著者紹介

連載孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

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