株価のチャートには「移動平均線」が表示されます。代表的なテクニカルチャートのひとつで、特に株式投資初心者が陥りやすい落とし穴が潜んでいます。そこで移動平均線の基本と注意点をみていきましょう。※本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する、株式会社ソーシャルインベストメントでトレーダーとして活躍する川合一啓氏が、個人投資家が株式市場で勝ち続けていくための極意について説明していきます。

「移動平均線」とはどんなものか

ある時点から、一定期間過去にさかのぼり、その間の平均株価を算出します。そしてその平均株価を連続させて線グラフにしたもの。それが「移動平均線」です。

 

たとえば、その日から過去5日間の平均株価を算出してそれを連続させた「5日移動平均線」、その日から過去25日の平均株価を算出してそれを連続させた「25日移動平均線」などがあります。5日、25日といった日足チャートのほか、週足チャートであれば「13週移動平均線」や「26週移動平均線」などが一般的です。

 

証券会社ごとにデザインは異なりますが、たとえば「5日移動平均線」は緑の線で、「25日移動平均線」は紫の線で、「50日移動平均線」は赤色の線で、という具合に、チャートのなかで比較しやすいように表示されます。また移動平均線は、証券会社のチャート画面で簡単に期間設定をすることが可能です。

 

ちなみに移動平均線には単純移動平均線の他に、加重移動平均線などがあります。たとえば加重移動平均線は、直近の株価を重視して特別な計算をして移動平均線を加工したものです。しかし今回は、わかりやすく本質的であるため、単純移動平均線を用いて話をすすめていきます。

 

基本的に移動平均線は、その期間における株価のトレンドを示しているといえます。たとえば短期移動平均線が上向きならば、最近は株価が上昇傾向にあるといえます。しかし長期移動平均線が下向きならば、それでも長期的には株価が下降傾向にあると読み取れます。

 

また短期移動平均線(たとえば5日移動平均線)が長期移動平均線(たとえば25日移動平均線)を上回る瞬間があります。このように短期移動平均線が長期移動平均線を上回る交差のことを「ゴールデンクロス」と呼びます。このようなゴールデンクロスのある「ゴールデンクロス銘柄」は短期的なトレンドが長期的なトレンドを上回っているということであり、株価の上昇の具合が「最近好調な銘柄」といってもよいでしょう。

 

なお、ゴールデンクロスの反対の概念として、「デッドクロス」もあります。デッドグロスがみられる銘柄は、株価の上昇具合が「最近不調な銘柄」だといえます。

移動平均線と株価の乖離率による銘柄スクリーニング

さて、証券会社が提供するツールを用いることで、そんな移動平均線の動向をもとに、銘柄スクリーニングをすることも可能です。

 

たとえば5日移動平均線と25日移動平均線、25日移動平均線と75日移動平均線など、移動平均線をもとにゴールデンクロス銘柄をスクリーニングすることもできます。

 

また株価が移動平均線から何%乖離しているか、という観点から銘柄スクリーニングをすることもできます。乖離率が(正方向に)高い銘柄ほど、移動平均線よりも株価が高い、すなわち「最近好調な銘柄」だといえます。

 

もちろん、どんな移動平均線を重視するかなど、スクリーニングの仕方は様々であり、唯一の正解があるわけではありません。それでも株価のトレンドから銘柄を選ぶ場合は、このような移動平均線に基づいたスクリーニングは、便利な方法ではないでしょうか。

 

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