「S&P500指数」で企業の業績の良し悪しを判断する
業績の良し悪しは、配当金の傾向からも推測することが可能です。配当金を出す企業は経営状態が良好であるケースが多く見られます。特に連続して増配している企業の場合は、さらにその可能性が高くなります。
連続増配の背景からは、次のような指標を測ることができます。まずは好業績であることです。配当を増額するには利益が順調に伸びている必要があります。
次に、健全な財務体質です。また、企業の株主還元への積極性も測ることができます。利益を企業内に貯めこんでしまうのではなく、株主に還元しているかどうかを判断することができます。そして、業績に対する経営者の自信、今後の業績への期待もうかがうことができます。
連続増配企業が投資先として優れているのかを確認できるデータがあります(下記図表1参照)。
[図表1]S&P500配当貴族指数とS&P500指数のパフォーマンス比較
グラフは米国で25年以上連続増配している企業で構成される「S&P500配当貴族指数」と、通常の「S&P500指数」を過去10年分パフォーマンス比較したものです。S&P500指数とは、米スタンダード・アンド・プアーズ社が算出している、米国の代表的な株価指数です。
2015年10月23日現在、2005年8月31日を100とした場合の「S&P500指数」のリターンはプラス7.96%、「S&P500配当貴族指数」はプラス10.89%のリターンとなっており、その差は明らかです。
特にリーマンショック後の差が鮮明となっていることから、金融危機後も立ち直りの早い、堅実な投資先であると判断できます。
ちなみに、日本の株式市場では米国配当貴族に連動するETN(2044)があり、1万円前後の少額から投資することが可能です。
米国は投資家の配当意識が高く、企業もそれに応えようとする傾向にあります。米国では20年以上増配している企業が150社以上あり、さらに40年以上連続増配を続けている企業も50社程度あります。
日本では20年以上連続増配している上場企業は、花王(4452)の1社のみであるため、米国では連続増配企業が圧倒的に多いことがわかります。
米国に遅れながら、日本でも連続増配の指数となる「S&P/JPX配当貴族指数」を日本取引所グループ・東京証券取引所とS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが共同で開発する運びとなりました。
この指数は、TOPIX構成銘柄の中から10年以上連続で配当を維持または増配する企業を中心に構成されます。構成企業に選定されれば、指数に連動するインデックス買いの需要や、海外投資家からの注目も集まり、株価に弾みがかかりやすくなると考えられます。
連続増配企業は「常に必要とされる企業」でもある
日本における連続増配企業は、どのような企業が挙げられるのか、TOPIX採用銘柄の中から10期以上増配を続ける企業をピックアップしました。また、直近の業績の好不調を判断するため、さらに5期以上連続で増益(純利益ベース)となる企業を絞り込みました(下記図表2参照)。
[図表2]10期以上連続増配企業
結果を見てみると、為替や金利動向に左右されにくい、内需系の安定した業績推移をたどる銘柄が多いことがわかります。10期以上連続増配ですから、2008年に起こったリーマンショックの金融危機後も変わらずに増配を続けたことになります。
一部をご紹介していきます。花王の連続増配記録は26期連続増配でダントツ1位です。四半世紀以上も増配を続け、株主還元が注目される以前から、積極的に株主を意識し、大切にしてきた企業と言えます(※2015年10月現在)。
2位の小林製薬(4967)は16期連続増配で株主還元に積極的です。同社は医薬品市場のニッチ商品の開拓に注力しており、わかりやすい商品のネーミングセンスも度々話題となる企業です。株主優待も実施しており、自社商品や通信販売の割引販売を受けることができます(※2015年10月現在)。
どちらもインバウンドの追い風を受ける企業です。しかし、業績好調の背景には、それ以上に、日本国内で常に必要とされる需要があると考えられます。私たちが普段、薬局などで手にする商品も、花王や小林製薬が手がける商品が多いことから、安定した需要の高さがうかがえます。
このような外部要因に左右されにくい企業は、株式の長期保有を考える投資家にとって有益な投資先になると考えられます。
ここまで述べてきたように、連続増配は企業から投資家への株主還元の一つであり、業績や財務状況、今後の先行きへの自信を測ることができるものさしです。優待の他に、配当への意欲も投資先を選定する上で重要になります。
今後、日本において、連続増配はますます注目を浴びる投資テーマになると考えます。