「時間があるようでない」相続の恐ろしさ
〈相続税の試算〉
相続税を試算するにあたっては、まず、相続する資産について財産評価を行ない、できるだけ早めに大まかな納税額を計算し、納税資金が実際のところ、足りているのか足りていないのかを依頼者に報告します。納税資金の目途を具体的に立てるのはそれからになります。
ところで、相続税の納税期限は、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。この佐藤さんのケースもそうでしたが、取引銀行など金融機関(あるいは不動産会社、生命保険会社など)からの紹介で税理士がお客様にお会いするタイミングは、多くの場合、49日の法要が済んだ頃となります。つまり相続が発生してから、少なくとも2か月弱が経過しています。
このタイミングで依頼を受けて、期限までにある程度の余裕をもって税務署に申告・納税をしようとするなら、すべての資産を評価するためにとれる時間は、実質1~2か月。不動産の現地調査、役所調査をする時間、評価減が適用できるかなど検討を重ねる時間を考えると、非常に厳しいスケジュールにならざるを得ません。
さらに今回のように、相続税の納税資金が足りないという場合、相続した不動産を売却する必要があるのであれば、どの不動産を残して、どの不動産を売却するか、詳細に検討することもしなくてはいけません。あっという間に日が過ぎてしまい、時間があるようでないというのが現実です。