「大変なことになる」とは気づいていたものの…
◆相続税の納税資金が足りない!
ご依頼人の佐藤さん(仮名)とはそれまで面識がなく、私が日頃取引している銀行からのご紹介で初めてお会いしました。
佐藤さんは80代の女性です。このほどお姉さんが亡くなられて、その資産を甥(40代)と姪(30代)とともに相続することになったといいます。その資産は主に、時価総額30億円を超える不動産で、実際にいくらの相続税を納める必要があるのか、また、ご自身で大まかに計算してみたところ、いずれにしろ所持している金融資産だけでは納税資金が足りないことがわかったので、相続後であっても実行可能で最適な納税方法を提案してほしいとのことでした。
佐藤さんは以前から漠然と、〝もし、この資産を相続することになったら、相続税を納めるのが大変だろう〟ということは認識していたそうです。しかし、お姉さんは生前、顧問税理士がいたにもかかわらず、相続対策を特に何もしていなかったのです。
今回の相続は、お姉さんが生前書かれた遺言書にもとづいたもので、取引銀行と打ち合わせを重ねて作成されたものであるため、その遺志に背(そむ)くようなことはしたくないといいます。したがって、相続を放棄するわけにもいかず、何としても相続税を納めなければいけません。私はさっそく、相続税の試算にとりかかりました。