「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

「なんであんな簡単な質問をするんだ!」

やっぱり!

 

検査当日。脳梗塞が再発していないかを調べる検査だとばかり思っているじーじは、朝の6時から背広に着替えて準備万端。

 

「お前も仕事があるのに、付き合わせて悪いなあ」といいながら、新聞を読み順番を待っているじーじ。「あ~、だましちゃったなあ」とちょっと心が痛む。MRI検査のあと、長谷川式の検査が始まった。

 

MRI検査のあと、長谷川式の認知症検査が始まったが…。(※写真はイメージです/PIXTA)
MRI検査のあと、長谷川式の認知症検査が始まったが…。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

心理士「今日は何月何日ですか?」
じーじ「2月14日」

 

私の心の声「おいおい、それは自分の誕生日だよ……」

 

その日は、1月31日だった。

 

心理士「ここは何階ですか?」
じーじ「3階」

 

私の心の声「おいおい、1階だよ……」

 

心理士「100から7を引いて、その答えからまた7を引いて、その答えからまた7を引いて下さい」
じーじ「93、86、79」

 

スラスラと正解をいうじーじ。は、早い! 私なんか、繰り下がりの時点で計算することを諦めたのに、さすが理系だと感心してしまうほど。

 

こうして、テストは続いたが、結局、正しく答えられたのは、引き算と野菜の名前ぐらい。なのに本人は「なんであんな簡単な質問をするんだ!」と少々ご立腹ぎみ。

 

MRIの画像には、スカスカになったじーじの脳がくっきり(本人は見ていない)。診断は、やっぱりアルツハイマー型認知症。

 

帰りの車の中で、じーじが聞いてきた。

 

じーじ「そもそも俺は、なんのために日赤(病院)に行ったんだ?」

 

私の心の声「日赤じゃないし~」

 

じーじ「あ! そうだ。血栓もなかったことだし、寿司が食いたいから、寿司を買って帰ろう」

 

母は7年前にレビー小体型認知症を発症し、現在は、施設に入所中。娘はパニック障害! 元気なのは私だけかい!と思いつつ、さあ、認知症在宅介護の始まりです。

 

おもな認知症の種類
アルツハイマー型認知症
認知症の原因疾患のうちで最も多い。脳に溜まった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、記憶をつかさどる海馬周辺から萎縮が起こる。軽度の物忘れから始まり徐々に進行し日付、時間などを正しく理解できないようになる。


脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などが原因となり、脳細胞が死んでしまうことによって起こる。脳血管障害が起きるたびに進行するが、障害をうけた部分により症状は異なる。


レビー小体型認知症
脳に溜まったレビー小体という異常なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊されて起こる。現実には存在しないものが見える幻視や、身体の動きがぎこちなくなる、手足が小刻みに震えるといった症状が現れやすい。

 

次ページ「認知症の症状はゆるやかに進行」という定説だが
認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

黒川 玲子

海竜社

わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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