「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症のじーじの行動を受け入れることにしたが

認知星人、あらわるあらわる

 

「デイサービスにな、それはそれは素晴らしい素材のなめしの革靴を履いている人がいてな、流暢な中国語で話しかけてくるんだよ」。デイサービスに出かける前、真顔で話しかけてくるじーじ。「どうやら中国の要人らしい。でな、シンガポールで行われるトランプとの会談に一緒に行ってくれって言うんだ。だから、パスポートを持ってデイサービスに行くから用意してくれ」。

 

わが家の「じーじ」こと父は、91歳。アルツハイマー型認知症で要介護3。娘の私と孫の3人で暮らし、月曜日から土曜日までデイサービスを利用している。

 

父親は91歳、アルツハイマー型認知症で要介護3。娘と孫の3人で暮らし。(※写真はイメージです/PIXTA)
父親は91歳、アルツハイマー型認知症で要介護3。娘と孫の3人で暮らし。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

よく、まだらボケという言葉を聞くが、わが家のじーじも、わけのわからないことを言う時と、そうでない時がある。

 

認知症と診断されて約1年。思っていた以上に認知症の介護は大変で、私はストレスがMAXになり大きな声を出してしまうこともあった。

 

「認知症の人が言うことを否定してはいけません」。いろいろなところで耳にするし、本にも書いてあるが、365日一緒にいる家族はお釈迦様にでも変身しないかぎり、到底できることではない。

 

そこで、どんな状態の時にわけのわからないことを言い出すのかを観察することにした。そうしたらなんと、わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状*が現れた時のじーじを「認知症のスイッチが入って、認知星人に変身した」と思うことにした。

 

じーじは、1日の中で地球人と認知星人を使い分け、予期せぬ行動で家族に数々の難問や攻撃を仕かけてくる。91歳のじーじに残された時間はそうは長くはない。最期にじーじが笑って天国に行けるように、じーじの行動を受け入れて、笑い飛ばすことに決めたのだった。

 

認知症の周辺症状
大きく分けて中核症状と周辺症状がある。
中核症状──脳の働きが低下することによって直接的に起こる認知機能の障害(記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認など)。
周辺症状──中核症状と、周辺の環境や本来の性格が影響して現れる行動・心理症状(妄想、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下など)。

 

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