「あなたも悪いんじゃない?」は紛れもない加害発言
<あなたを守る法律>
【刑法の一部を改正する法律案に対する附帯決議】
政府および最高裁判所は、本法の施行にあたり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
3 性犯罪に係る刑事事件の捜査および公判の過程において、被害者のプライバシー、生活の平穏そのほかの権利利益に十分な配慮がなされ、偏見に基づく不当な取り扱いを受けることがないようにし、二次被害の防止に努めるとともに、被害の実態を十分に踏まえて適切な証拠保全を図り、かつ、起訴・不起訴等の処分を行うにあたっては、被害者の心情に配慮するとともに、必要に応じ、処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
性犯罪、性暴力の被害者に対し、加害者や第三者が「被害者にも責任がある」といった意味のことを言ったり、言葉にはしなくても好奇の目で見たりすることで、さらなる心理的・社会的ダメージを与えることを「セカンドレイプ」といいます。この名称は、性犯罪の被害(一次被害)を受けた被害者に対し、被害者の周りの人がさらなる被害(二次被害)を与えることからつけられました。具体的には、以下のような言葉が、典型的なセカンドレイプと考えられます。
<セカンドレイプの典型的な例>
●自分が誘ったんじゃないの?
●なぜ抵抗しなかったのですか
●どうしてそんな場所にいたのですか
●殺されてないのだから、まだよかった
●平気そうにみえますね
●あなたに隙があったのではないですか
●早く忘れたほうがいいですよ
●そんな服装をしていたら襲われても仕方ない
「侮辱罪」や「名誉棄損罪」が成立する可能性
このような発言が、被害者が助けを求めることをためらわせたり、被害から立ち直ることを遅らせたりしている現状があります。その実態から、セカンドレイプについて言及した附帯決議*が成立しました。
(*附帯決議とは法律をつくるときに国会がつける、法律の運用についての意見・要望です。)
また、被害者側に立った報道や、犯人を批判する接し方であっても、事件を話題にされること自体が、被害者にとっては苦痛に感じられ、セカンドレイプになるケースも少なくありません。
セカンドレイプ自体に刑罰が科せられることは、通常はありません。ただし、よほどの侮辱や中傷があれば侮辱罪や名誉毀損罪が成立する余地があります。この場合、セカンドレイプという二次的な加害行為であると同時に、別の加害行為にあたるということです。また、民事上の慰謝料請求なども考えられます。
上谷 さくら
弁護士(第一東京弁護士会所属)、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長
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