別居中、自宅の住宅ローンと生活費は相殺されるもの?
Q.夫と不仲になり、夫は一人家を出て今は賃貸アパートに住んでいます。私は自宅に残っていますが、自宅は住宅ローンを組んで買ったマンションで、住宅ローンの名義人は夫なので、今も夫がローンを全額払っています。
夫からは離婚を求められていますが、協議がなかなか進まず、また、生活費も支払ってくれないので、私から婚姻費用分担請求をしています。家庭裁判所で用いられている「算定表」というものによると、夫が私に支払うべき標準的な婚姻費用は6万円程度とのことです。
しかし、夫は、
「自分は妻の住む家の住宅ローンで月10万円を払っており、妻は住宅費をまったく負担していないのだから、これ以上妻に払うべき生活費はない。」と主張しています。
このような夫のいい分は正しいのでしょうか?
A.住宅ローンの全額を差し引くことは認められませんが、一部減額される場合もあります。
この問題は、実務上の取り扱いがまだ確立しておらず、ケースによって様々な考え方が示されています。もっとも、確実にいえることは、
「住宅ローンで払っている金額全額が生活費の支払いとして認められることは無い」
ということです。何故かというと、住宅ローンを支払い続けることによって、最終的には住宅の取得ができることになりますので、その支払いは、謂わば「資産を形成するための支払い」というべきもので、賃貸住宅の家賃のように、払う一方で財産として残らない、というものとは意味合いが異なるからです。
したがって、このような住宅ローンの支払いについては、生活費の支払い(婚姻費用の分担)で考慮するのではなく、離婚の際の夫婦の財産分与において考慮すべき、という考え方が原則とされています。