医師の情報収集…臨床論文書くには「論文100報読め」の世界

臨床論文を書くにはまず「情報のインプット」を増やすことが大切だ。しかし実際は多忙で、長い文章をじっくりと読む時間はほとんどないだろう。ここでは、現役内科医の上昌広氏が、医学誌・科学誌から効率的に情報収集する方法を解説する。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

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論文作成の第一歩は、情報のインプットを増やすこと

「どうやれば、論文が書けるようになりますか」

 

若い医師に聞かれることが多い。基本は、多くの患者を診て、関係する論文を読むことだ。私が研修医の頃、黒川清・東京大学第一内科教授(当時、政策研究大学院大学名誉教授)から「一人の患者を担当すれば、関係する論文を100報読みなさい」と指導された。

 

研修医・専修医の期間、私はこの教えを守ろうと努力した。流石に100報の論文を読むことは稀だったが、できるだけ多くの論文を読んだ。今から振り返れば、これは私の医師としての基礎を形成するうえで、とても貴重な経験だった。

 

『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』や『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(いずれも文春新書)など、読書法の著書がある立花隆氏は、新しい領域の取材に取りかかるとき、書店に出かけ、関係がありそうな本を大量に買い込み、ざっと目を通すそうだ。重要なことは繰り返し登場し、その領域の現状が理解できるという。

 

これは、100報の医学論文を読むことと似ている。大量に情報を浴びることで、何となく頭が整理されてくるのだ。このプロセスは臨床論文を書こうとしている医師にとって重要だ。独創性も大切だが、臨床論文を書きたい医師がまずやるべきは、情報のインプットを増やすことだ。そのためには、平素から様々なメディアをフォローするのがいい。私のやり方をご紹介しよう。

医学界の動きがわかる…「社説」や「論考」は必読

まずは、医学誌・科学誌だ。私は、医学誌では『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(NEJM)』、『ランセット』、『米国医師会誌(JAMA)』、科学誌では『ネイチャー』、『サイエンス』をフォローしている。

 

私は血液内科を専門としているが、専門誌である『Blood』『臨床腫瘍雑誌(JCO)』『ネイチャー・メディスン』『ランセット・オンコロジー』などの専門誌は、メール・アラートで最新号の内容をチェックするだけで、特に興味がある論文がなければ、中身を読むことはない。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

医学誌・科学誌で、私が全文を読むように心がけているのは、『NEJM』『ランセット』『ネイチャー』などの前半、つまり原著論文以外だ。「社説」や「論考」など、各雑誌の編集部の考え方を示す文章が掲載されている。

 

臨床医学は容易に国際標準が形成される。その際に、もっとも影響力があるのが、このような雑誌の編集部だ。世界中から膨大な情報が集まっている。彼らが、何を掲載し、何を掲載しないかで、世界の医学研究の方向が決まると言っても過言ではない。このような雑誌の「社説」や「論考」をフォローすることで、編集部の考え方、つまり世界の医学界の動きが理解できる。

スマホの「読み上げ機能」で、スピーディに情報蓄積

読み方にもコツがある。多忙な臨床医が、論文を読むのに割ける時間は限られている。長い文章をじっくりと読む時間はほとんどないだろう。情報のインプットは隙間時間にやってしまいたい。そこで私が活用しているのは『Evernote』だ。多くの媒体はオンラインでも読める。それを『Evernote』にクリップして、移動中にスマホで「聴き読み」しているのだ。

 

iPhoneの場合、二本指で記事を上端から下になぞる、あるいは全文を選び、「読み上げ」を選択すると、スマホが記事を読んでくれる。こうすれば、電車の中や歩きながらも、記事を「聴く」ことができる。

 

iOS 13以降、英語で読み上げるには、「設定>一般>言語と地域>iPhoneの使用言語>英語」と設定を変えなければならず、また、読み上げ速度を日本語に合わせると、英語の読み上げは速すぎるし、英語に合わせると、日本語の読み上げが遅くなりすぎるなど、不都合があるが、それでも便利だ。

 

iOS 12までは、日本語の「設定」で英語も問題のないスピードで読み上げることができたので、是非、次のバージョンでは是正頂きたい。

 

話がそれた。「聴き読み」に戻そう。スマホの読み上げを聞きながら、記事を読むのは新鮮な体験だ。苦痛なく、長い文章を読むことができる。人類が黙読というスキルを身につけるまで、長い間、口伝で情報を伝えてきた名残かもしれない。聞きながら読むというのは、スマホ時代に初めてできた読み方だ。

 

では、英語に自信のない方は、どうすればいいだろうか。自動翻訳を用いればいい。近年、その精度が飛躍的に向上し、和訳、英訳、どれも実用に問題のないレベルだ。私はウェブブラウザとして『Chrome』を用いているが、自動翻訳機能をオンにすれば、英語で書かれたすべての文章を日本語訳してくれる。『NEJM』や『ネイチャー』などのオンラインの記事を自動翻訳して、『Evernote』にクリップし、日本語として読むこともある。

 

これは、自分の専門分野以外の記事を読むときにはおすすめだ。英語で「聴き読み」しても、基本的な単語を知らないので、すんなりとは頭に入ってこない。このあたり自動翻訳は上手く訳す。英語では理解できなくても、日本語なら何とかわかる。米国の政治など、外国の国内問題は、多くの臨床医には馴染みがない。このような形で読むことで理解しやすくなる。

 

もし、Googleの自動翻訳に満足できなければ、『DEEPL翻訳』を利用することをおすすめしたい。ドイツのベンチャー企業が開発したもので、『Google翻訳』より評価が高い。

 

このようにして、自動翻訳された文章を「聴き読み」することで、『NEJM』の総説のような長い文章でも10分程度で内容を把握することができる。こなれない表現もあり、完全には理解できないところもあるが、それでも、広く浅く情報をインプットするという目的には、これで十分だ。『NEJM』や『ネイチャー』を定期購読している人でも、メールアラートや目次で内容を確認するだけで、雑誌の中身まで目を通さない人が多いだろう。何を隠そう、この方法を始めるまで、私もそうだった。臨床医がまとまった時間を作り、長文の英語の記事を読むのは容易ではない。この状況は変わろうとしている。

 

自動翻訳の進歩は日進月歩だ。やがて、英語だけでなく、すべての言語が綺麗な日本語に翻訳されるようになるだろう。中国語やハングル、さらにマイナーな言語で書かれた記事も苦もなく読めるようになる。是非、試行錯誤を繰り返し、自分なりの医学誌・科学誌のフォローの仕方を確立して欲しい。

 

次回は、専門誌以外の一般メディアからの情報収集の方法について解説したい。

 

 

上 昌広

内科医/医療ガバナンス研究所理事長

 

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内科医
医療ガバナンス研究所理事長 

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院で臨床研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究する。著書に『ヤバい医学部 なぜ最強学部であり続けるのか』(日本評論社)、『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)など。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

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