「理由の第一はデフレ」。そして第二の真実は…
理由の第一は、デフレだからです。
デフレとは需要不足の状態です。資金需要がないのです。このため、金融機関は国債を買うしかない。デフレ下では、金利が極限まで下がるのは、そのためです。
加えて、市場は、本当は、日本の財政が破綻するなどとは信じていない。これが、国債の金利が低い第二の理由です。
日本政府は、ギリシャとは違って、自国通貨を発行できるので、債務不履行に陥ることはあり得ない。それに、財政赤字の拡大それ自体が金利を押し上げるということもない。
経済学者や経済アナリストが何と言おうが、これが現実です。市場の金利が上がらないのは、この現実を反映しているにすぎません。言い換えれば、日本政府は、市場からの信認を十分に得ているということです。
実際、金融危機などが起きて株価が急落すると、円高になることがよくあります。しかし、金融危機が起きると、財政危機の国の通貨が買われて高くなるなどというのは変な話でしょう。要するに、市場は、日本円が安全資産であること、つまり日本の財政破綻などあり得ないということを分かっているということです。
そして、国債の金利が低い理由の第三は、2013年以降の量的緩和政策で、日本銀行が国債を大量に購入しているからです。
日銀が日本国債を買うことができるのだから、日本国債が買い手を失って、金利が急騰するなどという事態は、およそ考えられません。
それでもなお、多くの経済学者やアナリスト、あるいは財務省が日本の財政危機を煽りまくったら、市場も心配になってパニックが起き、日本国債を手放し、買わなくなるかもしれない。その可能性はほとんどないと私は思いますが、他方で、ゼロとは言えません。
そういう勘違いに基づくパニックが起きたら、確かに、金利は急騰するでしょう。しかし、日本国債は、政府が元本を保証しています。
財務省自身が、ホームページで「国債は、『手軽』で『安心』。選ばれる理由があります」「元本割れなし」「国が発行だから安心」などと紹介しているのです[図表]。
元本が保証されていて、しかも高金利だったら、誰だって欲しいでしょう。私も欲しいですね。
したがって、もしパニックが起きて、国債の金利が急騰したとしても、国債の買い手はすぐにつくので、金利はたちまち下落するに違いありません。
それでもなお、もし、金利の急騰が収まらなかったら、どうしましょう?
その場合は、日本銀行が国債を買えばよいのです。いわゆる量的緩和政策とは日銀が銀行から国債を購入することです。日銀が買い手になって、大量に国債を買えば、金利は下落します。
というわけで、「財政赤字が拡大すると、日本政府に対する信認が下がって金利が上昇し、大変なことになる」という心配は、まったくの杞憂なのです。
【次回に続く】
中野剛志
評論家