「財政赤字がハイパーインフレを招く。」「国債に需要が無くなって金利が高騰する。」…このようなありふれた意見に対し、書籍『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』(KKベストセラーズ)にて、評論家の中野剛志氏は真っ向から痛快に異を唱える。

「やめればいいだけですよね?」のツッコミに…

「政治家は大衆迎合的な予算のバラマキをやりたがるし、歳出削減や増税には国民が猛反対するから、財政赤字は減らせず、インフレを止められないのだ」と。

 

しかし、財政支出を削減したり、増税をしたりしなくても、景気がよくなれば(インフレになれば)税収が自然と増えるので、財政赤字は減らせるでしょう。それに、中央銀行が金融引き締め政策を行って、インフレを止めるという手もあります。インフレが止められなくなって、ハイパーインフレになるなどということは、考えにくいのです。

 

それにしても、「インフレになっても、国民が財政赤字の削減を嫌がるから、ハイパーインフレになる」などという、国民をバカにしたような見解を、よくもまあ、平気で言えるものです。

 

よくもまあ…(※写真はイメージです/PIXTA)
よくもまあ…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

もし、この見解が正しいというのなら、国会が予算や税制を決める「財政民主主義」なんかやめろ、ということになってしまいますね。

 

しかも、平成の日本は、インフレどころか、デフレ下であるにもかかわらず、歳出削減や増税を断行したという(不名誉な)実績をあげています。これほど極端にストイックな日本が、高インフレになっても歳出削減や増税ができずにハイパーインフレを引き起こすなどと、どうやったら考えられるのでしょうか。

 

それに、歴史上を見ても、ハイパーインフレを経験した国というのは、戦争・内戦・革命による破壊のせいで供給力が極端に失われた(第一次世界大戦後のドイツなど)とか、旧社会主義国が市場経済へと移行する過程で混乱が生じた(1990年代の旧ソ連諸国など)とか、あるいは、独裁政権の下で狂った経済政策が行われた(ムガベ政権下のジンバブエ)とか、異常なケースばかりです※1

 

※1 https://www.cato.org/publications/working-paper/world-hyperinflations

 

いずれも、めったに起きるものではありません。特に、平時の先進国では、まず起きない。そのようなハイパーインフレが、およそ20年もデフレの日本で起きるとは、どういうことなのでしょうか。

 

どうしてもハイパーインフレが心配だというならば、その人は、自分の全所得をすべて日本円ではなく外貨に換えるべきでしょう。

 

ちなみに、ハイパーインフレとは、貨幣価値が暴落することですから、実質的な債務負担も急激に軽くなります。つまり、政府債務が心配な人にとっては、これほどうれしいことはないはずですが……。

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目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】

目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】

中野 剛志

KKベストセラーズ

読まれると経済学者・官僚が困る本ナンバー1 経済常識が180度変わる衝撃! 第1部 経済の基礎知識をマスターしよう 1.日本経済が成長しなくなった理由 2.デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ 3.経済政策をビジネ…

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