我々の「支援入院」の最大の特徴は、前述の通り近隣の開業医の先生方から医療連携室に電話で連絡をいただければ、大部屋であっても期日指定で予約を取ることができる点です。さらに患者さんは、非常に混んでいて長時間待たされる大学病院の外来を1度も受診する必要もありません。
これによって、「伊豆長岡は遠くて大学病院は受診しづらい」といった、距離の問題を解消できるようになりました。しかも、退院後もかかりつけ医への通院を前提とするため、退院サマリーにて詳細に糖尿病関連のデータや診療情報も提供してお戻しするので、開業医の先生方も安心して患者さんを入院させることができます。
これにより、開業医の先生方からの大学病院に対する紹介控えをかなり減らすことができるようになったのです。
それまでは、他院から紹介されてくる患者さんのなかには、血糖コントロールが極めて不良になって初めて当院を受診される方も少なからずおられました。そこには、初診が救急外来となる患者さんも多く含まれていたのです。
それが夜間の救急搬送だったりすると、医局員は当然、時間外勤務での対応を強いられることになります。昼間の緊急入院であっても、深刻であれば深刻であるほど高度な血糖コントロールを求められ医局員はそれにかかりきりになり、現場の負担が大きくなってしまっていました(第4回参照)。
そうなる前にきちんと紹介状をもって受診や入院してもらえるようになれば、患者さんも開業医の先生方も、我々大学病院の専門医も、みんながハッピーになるのです。
クリニカルパス導入で時間管理の主導権握る
この「支援入院」は、2週間の入院期間中に患者さんにとって適切な食生活とは何かを知り、血糖値を下げてもらうことも大きな目標として掲げていました。実際に体重を減らし、インスリン注射の回数を減らして退院される患者さんも珍しくありませんでした。
入院日は毎週火曜日、退院するのは翌々週の月曜日となっており、医師にしてもメディカルスタッフにしても誰がいつ・どこで・どのような検査・講義・食事指導を行うのか、具体的な内容と流れがはっきりと決まっています。
「クリニカルパスなら、それは当然」と思われるかもしれませんが、クリニカルパスのように、決まった流れの治療メニューを業務に取り入れることは予想以上に「働き方改革」を促進させてくれます。これを上手に活用しない手はありません。それに一般入院であれば、入院してくるタイミングもバラバラなので、「残念ながら、予約がいっぱいで入院中は検査ができなのです」といった事態も多々生じます。
しかし、「支援入院」は、あらかじめ検査・講義・食事指導が組まれており、基本的に必要な検査を必ず受けることができます。これも患者さんにとって大きなメリットです。
一方、医師や病棟看護師にしても、毎週のルーティンとして「支援入院」が組まれているので、例えば「金曜日に、次週の入院のオーダーを確認しよう」「今日は退院日だから、午前中のうちに退院時総括の確認をしよう」というふうに、各人の仕事の計画が立てやすくなります。
また、ルーティンのなかでお互いが事前にやっておかないといけないことは何か、今何をやっているかも認識でき、確認事項の見落としも激減し、病棟看護師から医師への問い合わせも相当数減らすことができました。