コロナショックで景気が急速に悪化する中、あらゆる企業が倒産予備軍である。売上の落ち込みはもちろん、不必要な固定経費も経営圧迫の要因であり、真っ先に見直しを進めるべき部分だ。ここでは、経営コンサルタントの森泰一郎氏がコロナ禍における企業の生存戦略を紹介する。※本連載は、『アフターコロナの経営戦略』(翔泳社)より一部を抜粋・再編集したものです。

投資信託サービスを他業界に応用すると…

読者の中には、わが社はIT業界ではないから、サブスクリプションは導入できないのではないか、と考える方もいるだろう。

 

しかし、サブスクリプションはもともとIT業界以外で発展してきたモデルであるため、IT業界でなくともサブスクリプションが導入できないことはない。ジムやエステ、英会話教室、料理教室などの多くの自己啓発に関連する業界では、昔からサブスクリプションが前提であった。

 

チケット制になっていて、毎月の月謝や利用料で何回通えるかが決まっており、基本的に解約しなければ契約が継続される仕組みになっている。郵便局などで展開されている地方の名産品のお取り寄せも、同様にサブスクリプションである。健康食品もそうだろう。

 

これらのサービスの仕組みを、皆さんも一度は利用された経験があるはずで、それらがどのような仕組みになっているのかを研究して、応用すればよいのである。

 

たとえば小売店であっても、アマゾンが行っている「アマゾン定期便」や「アマゾンパントリー」のような仕組みを導入し、ユーザーが毎月購入する商品を定期的に届けるサービスを行うことでサブスクリプションを開始することは可能だ。

 

たとえばスーパーやドラッグストアであれば、「アフターコロナ」の世界でユーザーがよく使うような消耗品や消費量の多いシャンプーや石鹼、ハンドソープなどを詰め合わせ、いくらか値引きをして定期配送することはできないだろうか。中堅以上のスーパーやドラッグストアでは自社のPB商品がある。それらのPB商品を詰め合わせて安く販売するやり方もあるだろう。

 

これらは、特に交通の便がよくないエリア、ECでの配送に時間がかかるエリアなどでは、ブランドの始発点である社会の価値とユーザーの課題も同時に解決する素晴らしいサービスとなる可能性がある。

 

同様に顧客の購入頻度が低いような業界でもサブスクリプションは導入できる。むしろそういう業界こそ、競合がサブスクリプションを導入していないことから、早期に検討する価値がある。

 

たとえば、エントリーモデルとしてのサブスクリプションの導入が考えられる。具体的な事例は後ほど詳しく取り上げるが、このエントリーモデルとしてのサブスクリプションは、投資信託ビジネスの仕組みがヒントになる。投資の初心者は個別株式の知識がないし、投資の予算も小さい。であれば、運用会社に一任して、自分の興味のあるテーマで、少額から定期の積み立てで間接的に株式を保有するのが投資信託の仕組みである。

 

この投資初心者のための投資信託のサービスは、他の業界にも応用できる。たとえば、入館セキュリティ設備を提供している企業が考えられる。今はセンサーとIoT、非接触型ICの技術が格段に進んでいる。そして、「アフターコロナ」の時代にはいよいよ本格的に5Gが普及し始めるようになる。

 

すると、企業は設備のおおかたの稼働率や混雑状況が予測できるし、いつコロナが再発するかわからない以上、非接触型のセキュリティのニーズは増加していくことが予想できる。既に、ビルの入り口で体温が同時に測れるセキュリティシステムは、そのニーズが急拡大している。

 

しかし、小規模なオフィスだと、そこまでの投資余力がないため、導入してもらうまでのハードルが高い。そこで、初期投資の必要がなく、ユーザーの通過数に応じて、月額の使用料として、サブスクリプションモデルで回収する仕組みを導入するのである。こうすれば、これまで導入をためらっていた不動産会社もシステムを導入しやすくなり、入居する企業からのニーズにも応えやすくなる。

 

以上のように、「アフターコロナ」の最初の3年間のプランのひとつとして、企業ブランドの向上、ユーザーとの定期的なつながりの形成、そして売上げの安定性という3つの重要な目的から、すべての業界でサブスクリプションを経営戦略に導入することが必須になるだろう。

 

 

森 泰一郎

経営コンサルタント

 

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アフターコロナの経営戦略 コロナショックを生き延びる! 事業経営の実践ノウハウ

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翔泳社

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