離婚時、慰謝料とともにトラブルに発展しやすい「子どもの親権」問題。今回は実例を基に、離婚時一度届け出た親権者を、あとから変更できるのか解説します。

離婚時一度妻に親権を渡したが、後から変更できる?

Q.妻が夜の飲食の仕事を始めてから朝帰りを繰り返し、挙句そこのスタッフと不倫し、さらに妊娠したことも発覚したので離婚することとなりました。

 

妻は夜の仕事で夜は不在にしていて、子どもの育児は私が主にしていましたので、私が子どもを引き取りたかったのですが、妻からの強い要望で譲歩し、離婚時に子どもの親権者は妻として届けました。

 

しかし、婚姻時から妻の生活状況や育児能力には問題があり、離婚後の妻の生活状況を見ても特に改善されずまともに子どもの育児ができる状態ではありません。ですので、親権者を父側に変更したいと考えています。どうすればよいでしょうか。

 

親権者の変更は可能なのか…(画像はイメージです/PIXTA)
親権者の変更は可能なのか…(画像はイメージです/PIXTA)

 

A.まずは、家庭裁判所に親権者変更の申立の調停(または審判)を申立て、裁判所で協議をし、または裁判所に変更の決定をしてもらう必要があります。調停というのは、簡単にいえば裁判所での話し合いです。この調停で、親権者の変更について父母間で同意ができればそこで決着できます。

 

しかし、このような親権者の変更については、父母間の対立が大きい場合も多いため調停で決着できず、審判という手続、すなわち裁判所によって決定をしてもらうという手続まで進むことが多いです。

 

となると、親権者の変更を求める側としては、裁判所が親権者の変更を認める場合には、どのような基準で判断しているのか、ということがとても気になるところではないでしょうか。

「子の利益のため必要がある」場合変更が認められる

この点について、まず、法律の規定を見てみますと、民法819条6項は

 

「子の利益のため必要があると認めるときは,家庭裁判所は,子の親族の請求によって,親権者を他の一方に変更することができる。」

 

と規定しています。つまり「子の利益のため必要がある」と認められれば、変更が認められることとなりますが、当然これだけではよくわかりませんね。そこで、実際の裁判例の傾向をみてみますと、変更するかどうかの判断基準としては

 

・監護体勢の優劣

・父母の監護意思

・監護の継続性

・子の意思

・子の年齢

・申立ての動機,目的等

 

が挙げられています(最高裁事務総局編・改訂家事執務資料集中巻の2・356頁以下)。これに加えて、

 

・母親優先の原則

・監護の継続性(現状尊重)の原則

・兄弟姉妹不分離の原則

 

等も考慮されているようです。これらの要素は、離婚時に親権者を決める際の基準としても重視されている要素です。したがって、離婚後の母側の育児・監護状況に問題があれば、親権者の変更は認められそうにも思われます。

 

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