一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、その実現は困難ではないかと指摘されている。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

よく、「インスリンを打ちはじめたら一生やめられない」という都市伝説的なイメージをお持ちの方がいらっしゃいますが、必ずしもそうではありません。


特に肥満を伴った2型糖尿病患者さんが適切な血糖コントロールを行い、正しい食事療法によって体重を管理していけば、インスリン治療導入開始から半年程度でインスリン治療を卒業される方も珍しくないのです。

 

当院においても、血糖コントロール不良のためにインスリン注射を日に4回行っていた患者さんが、食事療法に対する理解を深めたことで、たった2週間の入院期間中にインスリンを卒業し、退院以降は夜間低血糖を起こさない内服薬へと切り替えることができた事例がいくつもあります。


糖尿病内科の入院患者さんに対しては、次回ご説明する「糖尿病支援入院」という制度を積極的に活用していきました。

 

この入院中に糖尿病患者さんの糖尿病に対するリテラシーを高めるような様々なプログラムを設け、退院後永らく、入院治療が必要になるような血糖コントロール不良な状態に陥らないように糖尿病チーム一丸となって指導を行っていったのです。これも、救急外来で低血糖による救急搬送患者さんが低減できた、大きな要因の一つだと考えています。

改善例発表を学会で発表、治療法の正しさを確信

赴任後3年目頃から、明らかに救急外来で低血糖による患者さんの搬送が減ってきたことを実感していました。データ的にも本当に減少しているかを検証するため、医局員に経年的な推移を調査してもらい、ちょうど静岡県内で開催予定だった日本糖尿病学会の東海地方会に向けて学会発表の準備も進めてもらいました。(その内容;片平雄大、登坂祐佳、杉本大介、青山周平、飯田雅、佐藤文彦;日本糖尿病学会中部地方会(静岡) 2015)。

 

 

 

結果として、確かに2型糖尿病患者の当院への低血糖搬送数が年々減少しており、2014年(平成26年)には我々の診療科のかかりつけの患者さんでは4人にまで減少していました。我々の予想を上回る成果に自分たちでも、実際にデータをまとめてみて改めて驚きました。そして、この結果を静岡県内の糖尿病専門医の先生方が多く集まる地方会で発表することで、さまざまなご意見をいただきたいと思いました。

 

正直、地元の先生方がほとんどで、当院のことについてもよくご存じなので、ご批判も多いだろうと覚悟しておりました。しかし、発表後、非常に好意的な多くご意見をいただけて安心したのと同時に、我々の行なっている治療方針についての“自信”が、“確信”に変わりました。

 

こうった発表の場も、第7回でご紹介する、地域医療連携を深めるきっかけになっていったのではないか、と今振り返って思います。

 

医師の働き方改革のポイント
●医局員たちに問題点や要望だけでなく、その解決策も聞いてみる
●はっきりとした成果が期待できる施策は他診療科も巻き込む
●成果を発表する機会をもち、自院の取り組みを広く知ってもらう

 

佐藤文彦
Basical Health産業医事務所 代表

 

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