社員の能力開発は、誰が行うべきなのか?
もし、人件費分しか売上総利益を得られなければ企業は赤字に陥ります。また人件費の2倍相当の利益であればおそらく収支はトントンで、そこから未来を見通すことはできません。そう考えるとやはり人件費の3倍、すなわち、2倍プラス1倍の上積みが不可欠です。この上積み分をどのようにつくり上げるのかが、各企業が考えるべきポイントです。
この場合、企業はどこまで役割を担うべきかを確認しておく必要があります。業務命令ではなく、社員が自発的に時間をつくり自分磨きを行うことがあるからです。どちらかといえば、本人の能力は本人が磨くものとして企業はあまり関与しないという時代が長く続きました。
かつてソニーの盛田昭夫社長が、企業内教育について次のような言葉を述べています。
わが社は学校ではないので 社員を育てることに注意を払う必要はない 落伍者は残念だが おいていく(盛田昭夫研究会編『盛田昭夫語録』小学館文庫)。
自分の能力には自分で責任を持つ。ずいぶん厳しい時代でもありました。しかし、社会が複雑化する中、企業に要求されるものは多様化し、企業が個人に求める能力も高度になっています。そのため社員が独自に自己啓発を行うだけでは十分ではありません。
[図表1]は厚生労働省が2013(平成25)年度に行った能力開発基本調査の結果です。
正社員を教育するときの責任主体について調査したものです。企業主体で決定すると答えた企業が23%、企業主体で決定するに近いと答えた企業が52%、つまり75%が企業の関与が大事であると考えています。企業と社員が力を合わせて能力を開発しなければならない時代を迎えているのです。
社員を「資産」として考えると、労働生産性が向上する
年収500万円の社員の年間総労働時間が1740時間とすると、時間単価は2873円です。この企業が収支トントンを目指すのであれば時間単価は2873円の倍でなければなりません。つまり、一人当たり5746円の売上総利益を生み出す必要があります。
しかし、ここに未来力は生まれません。時間単価5746円では本人の給料と会社の経費で消えてしまいます。そこで給料の3倍を目指し、さらに2873円の価値を加えた8619円の価値を生み出さなければなりません。
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