65歳以上の4人に1人が認知症になる時代、希望どおりの相続を実現するには認知症対策が欠かせません。被相続人は、元気なうちに、遺言書・任意後見契約・死後事務委任契約からなる「終活3点セット」を作成しておきましょう。ここでは「死後事務委任契約」について解説します。※本連載は、OAG税理士法人取締役の奥田周年氏監修の『親が認知症と思ったら できる できない 相続 暮らしとおかねVol.7』(ビジネス教育出版社、『暮らしとおかね』編集部)より一部を抜粋・編集したものです。

死後事務の報酬、預託金…死後事務委任契約の費用は?

死後事務委任契約を親族や友人などに託す場合、通常、委託費用は発生しません。ただし、各種手続きや届け出に必要な書類の取得、それにかかる交通費など、実際にはさまざまな費用が発生します。そのため正式に依頼する場合は、葬儀費用など実費と謝礼を生前に預けておくことをおすすめします。もちろん、金額は葬儀の内容や依頼する手続きによって異なるので、想定できる範囲で用意してください。

 

また、司法書士などの専門家に依頼する場合は、実費のほかに報酬が発生します(依頼手続きの流れは『【画像】司法書士などに依頼する場合の手続きの流れ』参照)。さらに通常、契約は公正証書で行うので、公証人の手数料も発生します。

 

なお、想定される費用は、次の通りです。

 

●死後事務の報酬:

通常、10~100万円程度です(手続きの内容によって、かなり差があります)。

 

●預託金:

葬儀費用、遺品整理費用、納骨費用等の各種経費を生前概算で見積もって代理人に託します。

「寝たきり」リスクに備える「財産管理等委任契約」

判断力はしっかりしているが、動けなくなってしまった。そんなとき、自分に代わって銀行へ行って入出金をしたり、病院で治療費を払ったりしてくれる人がいると助かります。

 

そうしたとき役に立つのが「財産管理等委任契約(任意代理契約)」で、特定の人に代理人になってもらい、財産の管理などを依頼することができます。この契約には、特別な決まりはなく、本人が自由に代理人を選ぶことができます。

 

また、依頼したい内容も自由に決められます。口約束でも構いませんが、公証役場で公正証書として作成しておくと安心です。

 

このように自由度が高い反面、任意後見制度のように任意後見人がつくわけではないので、代理人をチェックすることができません。

 

<依頼できること(例)>

●金融機関の口座の管理

●身のまわりの物品の購入

●所有している不動産の家賃の受け取り

●公共料金や介護サービス費用の支払い

●住民票や戸籍謄本などの取得

全財産を、特定の団体・施設に寄付するという選択

【事例】伴侶を失った高齢女性…「自分亡き後、全財産を寄付したい」。契約の中身

 

ご主人を亡くしたAさんは、自宅を処分し、サービス付き高齢者向け住宅に入居しました。2人には子どもがなく、「自分が死んだら、全財産を子どもたちの教育を支援する公益財団法人に寄付したい」という、相談を受けました。

 

Aさんは75歳。まだ判断力もしっかりしていますが、今後判断能力がなくなったときのことを考え、任意後見契約を希望されました。さらに財産を公益財団法人に寄付することを明記する公正証書遺言を作成し、死後事務委任契約、財産管理等委任契約、も締結されました。こうして万が一のとき、さらには亡き後の手続きに関する不安を一掃しました。

 

Aさんのように社会貢献活動を行う団体や、お世話になった施設などに寄付(遺贈)したいという方は少なくありません。また、財産を受け取った相続人が寄付を希望する場合もあります。もちろん寄付する先が決まっていれば問題ありませんが、これから寄付先を決める場合は、どのような団体があるのか悩むものです。対象も子どもの支援、高齢者・障害者の支援、災害復興支援、自然保護、文化・芸術・スポーツの振興など、さまざまな分野があるので、まずは対象から検討することをおすすめします。

 

次に寄付する先ですが、特定の法人に寄付する場合、相続税の課税対象分の金額から寄付金額を差し引くことができます。国、地方団体、公益社団法人、公益財団法人、国立大学法人、公立大学法人、社会福祉法人、認定NPO法人など、税制優遇の対象になる寄付先はさまざまなので、その点も含めて検討しましょう。ただし、似たような名称の「一般社団法人」や「一般財団法人」への寄付は、税制優遇の対象にならないので、注意してください。

 

ご自身の亡き後に寄付(遺贈)する場合、遺言書を作成する必要があります(関連記事『息子「50万円貸して」でクレカを…認知症疑惑の母。娘の無念』参照)。そこに、どの財産を、どこに遺贈したいか、だれを遺言執行者に指定するかを書き込むことで、執行されることになります。なお、確実に遺言書が実現されるようにするためには、公正証書遺言を作成すると安心です。

 

 

【監修】奥田 周年
OAG税理士法人 取締役
税理士、行政書士

 

【協力】IFA法人 GAIA 成年後見制度研究チーム

 

【編集】ビジネス教育出版社 『暮らしとおかね』編集部

 

 

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親が認知症と思ったら できる できない 相続 暮らしとおかねVol.7

親が認知症と思ったら できる できない 相続 暮らしとおかねVol.7

監修:奥田 周年
執筆協力:IFA法人 GAIA
編集:『暮らしとおかね』編集部

ビジネス教育出版社

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