「子ども一人に財産を預けて」起きた辛すぎる悲劇
先ほど筆者は法定後見制度のところで、「成年後見人は財産をできる限り多く残そうとするあまり、本人や配偶者のためになるようなところで、お金を使ってくれないことがある」とお話ししました。それと同じことが、利益相反の関係にある子どもを任意後見人に選ぶことで、起こってくる可能性が極めて高いのです。
子ども間の争いの種となり得るのは、言うに及ばずです。子どものうちの一人が後見人になったところ、親のお金を自由に使ってしまい、亡くなった後、何も残っていなかった、という事例を、筆者は多く見聞きしてきました。
結局、一夫さんは、友人の例にならって、自分も第三者にして法律の専門家である弁護士に、任意後見人を依頼しようと考えました。
【ステップ2 弁護士を選ぶ】
明子さんと相談した上で、一夫さんは任意後見契約を結ぶのを前提に、弁護士を探すことにしました。現役時代に勤めた会社の顧問弁護士や、弁護士の知人などに頼んでもいいかな、とも思いましたが、任意後見制度はまだあまり広く知られていないため、彼らに十分な知識があるかどうかをはかりかねました。
そこでまずは法律相談というかたちで出向いて、相手の弁護士のこの制度に対する知識と経験や人柄を確認しようと、電話帳をめくって見つけた、自宅から2駅先の弁護士事務所に連絡を取り、まずは会って話を聞いてもらうことにしました。
しかし実際に会った弁護士は、自分たちと同年代の気難しい感じの人で、任意後見制度について詳しい知識を持っているという印象も受けませんでした。
2人とも「この人に自分たちの老後を託したい」という気持ちにはなれなかったのです。また相手が同年代ということは、自分たちが弱るのと同時に、相手の健康状態にも問題が生じ、契約が実行されなくなる可能性が高いということに気づきました。
■自分の子どもと同年代の弁護士に依頼するほうが…
最初に法律相談というかたちで弁護士に会いに行ったのは、非常にいい方法だったと思います。相手の経験や知識、人柄などを知ることができますし、もし期待にそぐわなかった場合は、任意後見契約の依頼をしなければいいだけの話です。
なお、日頃からパソコンを扱い慣れていて、インターネットを使いこなせるようであれば、「弁護士 任意後見制度」などのキーワードで、最初から適切な弁護士を探し出すことができます。
全ての弁護士が気難しいわけではありませんが、気難しい人の割合が比較的高いことは、中にいる私自身も感じています。一般の方にとって、法律事務所や弁護士は、なじみがなく敷居の高い存在に感じられることでしょう。