仲の良い家族でも、お金が絡むと人は変わるもの。相続にまつわる争いは絶えません。そのようなトラブルを他人事と思わずに、事例から相続対策を学ぶことが重要です。今回は、編集部に届いた遺産分割協議中に起きたトラブルについて、相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が解説します。

母と長女の遺産分割案に、二女は反対で大喧嘩

その後、二女も交えて、遺産分割の話し合いの場が持たれました。自宅はAさん、預貯金は長女と二女で等分に。あとは二女の許可をもらうだけ……。話し合いはすぐに終わり、久々に親子3人でお寿司でも食べに行こう、と軽く考えていたとAさん。しかし二女の口から出てきたのは、思いも寄らぬ言葉でした。

 

「そんなのイヤよ。私には1,500万円もらえる権利があるんでしょ。だったら、1,500万円、きちんと分けてよ」

 

「えっ!?」とAさんも長女も、一瞬耳を疑いました。

 

「でも、1,500万円用意するには、この家を売らないといけないじゃない。わたしとお母さんはどこに住めばいいのよ」

 

「それと、これとは話は別よ。これはお父さんの相続でしょ。こういうのは、きちんと決められたとおりに分けないと、あとで揉めることになるのよ」

 

このような押し問答が、長女と二女の間で繰り広げられました。Aさんは、「えー」「あのー」と二人の間に入ろうとしますが、ヒートアップした言い争いのなかに、割って入るタイミングがつかめません。

 

「この家が売れないなら、預貯金の1,000万円はわたしにちょうだい。自宅はお母さん。これでお姉ちゃんも住むところは確保できるわけだから、いいじゃない」

 

確かに、それでもいいわね。自分に何かあったとき、この自宅は長女に相続できるようにしておけば、そのまま住んでもよし、売ってもよしで、長女も得するわけだから……Aさんは、そのように考えて賛同しようとしたら、今度は長女が思いも寄らぬひと言を口にします。

 

「いやよ! お母さんだって、この先、10年、20年、下手したら、30年くらい長生きするかもしれないのよ! 世話をするのは、一緒に住んでいる、わ・た・し。なのに何ももらえないなんて、不公平じゃない!」

 

コロッと態度を変えた長女に、Aさんも二女も、一瞬、時が止まったように言葉を失ったそうです。確かに、あと何年生きるかわからないけど、それを負担だと、直接本人の前で言葉にするなんて……。少々、息苦しさを感じて、とりあえず、その場を離れたというAさん。しばらく、姉妹の言い争いは続き、結論は出ないままま、話し合いの場はお開きになりました。

 

そのあと、母と長女、二人きりの夜。なんとも微妙な空気が流れていたそうです。ちなみに遺産分割協議は、まだ続いています。

 

驚きのあまり、開いた口が塞がらない(※画像はイメージです/PIXTA)
驚きのあまり、開いた口が塞がらない(※画像はイメージです/PIXTA)

 

次ページ解説:遺産が少ないほど、相続争いは発生しやすい

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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