「無効だよ無効!」争族発生もさらなる問題が起き…
「ちょっと落ち着いてよ! お母さんの字で、ハンコも押してあるじゃない! 共謀してるなんて信じられない。自分が何言っているかわかってるの⁉」
「こんなもの認められない。無効だよ無効!」
こうして長男は遺留分(今回の場合、民法上では実家の1/4が長男の持ち分)をヒロコさんに請求(遺留分減殺請求)※したのです。
※ 遺留分減殺(侵害額)請求・・・不平等な遺言や贈与によって「遺留分(最低限相続できる権利)」を受け取れなかった人が、遺留分の取り戻しを請求すること
ヒロコさんはすぐに弁護士に相談し「遺留分を渡したくない」と伝えました。しかし、争っても勝ち目がないと弁護士に諭され、しぶしぶ応じることにしたのです。遺留分は現金で精算しました。
「こんなに手痛い出費がありますか…」とヒロコさんは無念の気持ちが募ります。相続自体は決着しましたが、こうしてヒロコさんとアキラさんの間には大きな遺恨が残りました。
加えてヒロコさんとアキラさんはそれぞれ自宅を保有しているため、引き継いだ遺産(実家)は「空き家」状態。これがまた、新たな問題を生んでしまったのです…。
■長男が「実家の売却」を持ち掛ける…魂胆に絶句
自分からは連絡を取らないようにしていたヒロコさん。そんな折、長男が「家を売却してそれぞれの持ち分(ヒロコさん3/4、アキラさん1/4)で分けたい」と持ちかけてきました。
それぞれ別々の場所で生活しており、建物の老朽化も著しく維持管理が大変だというのです。
「実家にはどうせ住まないだろ? 俺もお前も別の場所で暮らして仕事もある。この前ちょっと寄ったけど、外も中もボロボロだったぜ。直すのにも金かかるし、固定資産税もバカにならないんだから売っちまおうよ」
さらに長男は続けます。
「それでさ、実家を売るならお前の持ち分を俺が買い取るから。な? 悪い話じゃないだろ?」
つまり、アキラさんの持ち分が100%となった状況で売却したいということでした。長男は明言しなかったものの、実家は商業地域に位置しており、希少性が高い物件でした。高さのある建物が建てられるため、高値で売れる可能性があると考えていたのでしょう。