日本人の弱点が際立つ「100点満点のテスト」という大問題 

混迷を極めるいまの時代、勝ち残るには的確な判断力が不可欠です。しかし、自分自身を信頼・肯定できなければ、正しい判断力は育ちません。本記事では、ハーバード大学、東京大学、開成高校のそれぞれで教鞭をとったベテラン教育者で、東京大学名誉教授・北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏が、子育て中の保護者に向けて、子どもの人生を根底から支える「自己肯定感」の育て方を解説します。※本連載は、『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHPエディターズ・グループ)より一部を抜粋・再編集したものです。

自己肯定感が低い要因は「減点主義の教育」にある!?

減点主義ではリーダーになれない。
子どものよいところを見つけて加点する

 

自己肯定感が低い要因のひとつに、「減点主義」があると、私は思っています。日本人は、“謙遜する国民”のせいか、ものごとを減点で考えるところがあります。100点満点のテストで95点もとれているのに、勉強が得意な子どもやその保護者ほど、「5点失った」「95点しかとれなかった」「完璧ではない」と考える。

 

そして、あと5点を獲得するために努力する。点数のいい子ほどそうです。これは、大変な損失だと考えています。100点満点のテストの場合、裾野(すその)のほうは得点が分散化していますが、高得点者はほとんど差がつかない。99点と98点の子どもに、どれぐらいのリーダー資質の差があるでしょうか。資質の差はまったく読めないのではないでしょうか。

 

それより、加点方式にしたほうがいいのです。まず、満点を100点と限定しない。100点は基準ではあるけれど、それを超えるすごさがあれば、250点、400点をつける。0点をスタート地点とし、こういうことができたら3点プラス、こんなすごいことができたら30点プラス。それを積み重ねていったら、軽く100点を超えてくる、さらに1000点も超える、というのでもよいではないですか。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

すると、「オレはできると思っていたけれど250点、でも、400点のやつもいるのか。150点も差がある。それなら、あいつがリーダーになるのがふさわしい」と思えてきます。そして、その後も自分の可能性を高めるために、加点にチャレンジしていく。伸びしろに制限をつけないことが、伸びる要因になるのです。

 

そして、どんどん伸びて400点を超えたときに、リーダーとしてのチャンスは巡ってきます。アメリカ人は、こういう考え方をする人が多いと思います。しかし、日本人の場合、「オレは99.2点」「あいつは99.4点」と、減点法で僅差(きんさ)を争う体質です。あまり差がつかないから、リーダー選びも難しい。たとえば官庁の事務次官が「持ち回り」になるのは、この結果のあらわれです。あの人もこの人も点数が同じくらいだから、1年ごとにやってもらいましょうと。そうでなければ不公平だ、ということになるのです。

 

僅差であると、それぞれの個性にも着目できません。だから、保護者は、子どもを褒めてください。あまり深く考えず、子どもがうまくできたときに、「あ、上手にできたね!」と口に出せばよいのです。この先、何を得意分野としてやっていくのか、どこに自己肯定感を持つのかは、親が決めることではありません。

 

子どもが、「自分はこれが得意」「これが好き」と思える土台を、親は作るだけです。そうしているうちに、子どもたちは好きなことを見つけ、それが個性になっていくでしょう。

子どもの決断力を磨くには「ダメ出しをしない」こと

子どもにダメ出しをしない。
Yes,but、“ちょい足し”の言い方を身につける

 

子どもの決断力を磨くためには、「ダメ出しをしない」ことが重要です。とにかく、子どもがやろうとしていることを肯定する。「あなたなら、大丈夫なんじゃない?」と言ってあげることです。

 

もちろん、無理そうだと思うこともあるでしょう。けれど、それでも「ダメ」とは言わない。子どもは大人が思う以上に大人に従順で、どれだけ反発しても親や教師に完全に逆らうことは難しいと思っています。だから、大人に「ダメ」と言われると、「屈した」という思いとともに、敗北感を味わいます。

 

だからこそ、多少心配でも、第一声は「いいね!」にすることが大事なのです。親に応援してもらえているからこそ勇気がわき、ポジティブに前に進めます。そうはいっても、危なっかしい、絶対に無理だ、と思うこともあるでしょう。そんなときも、やはり最初は「いいね!」です。子どももそう鈍感ではないので、親が「いいね」と言いつつ「ちょっと無理かも……」と思いながらすすめてくれることは、「あれ、やばいかな」と察するものです。

 

「無理してOKを出している」とわかったら、自分で考え始めます。心配で心配でたまらないときには、「いいね!」のあとに、「だけど……」と口に出してもいいでしょう。Yes,butの言い方です。but以降の言葉は短めにしましょう。「それをやると、帰りが22時を回らない?」とか。「○さんがちょっと不愉快かもしれないね」程度に。

 

そして、疑問形にしたり、つぶやきにしたりする。あまり断定的に言い過ぎないことです。ネガティブな意見を最初から言ってしまうと、子どもは拒否反応を示しますが、最初に「いいね!」があれば聞けるのです。また、子どもに考える余地を残した言い方なら、「親の言うことなど絶対にきかない!」という意固地さも、少しほぐれます。

 

その上で、「力いっぱいがんばって!」と応援すれば、親を悲しませないようにと頭の片隅において、行動するものです。子どもも、意外に考えているのです。

東京大学 名誉教授
北鎌倉女子学園 学園長 

1947年生まれ。前・開成中学校・高等学校校長。東京大学名誉教授。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに複数回選出)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て、2011年4月から2020年3月の9年間、開成中学校・高等学校校長を務める。2020年4月より北鎌倉女子学園学園長に就任。

シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者。自身も2人の男子を育て、小学生から大学院生まで教えた経験を持つ。

主な著書に『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』(秀和システム)、『東大とハーバード世界を変える「20代」の育て方』(大和書房)などがある。

著者紹介

連載ハーバード・東大・開成で教えてわかった!「頭のいい子」の親の共通点

「頭のいい子」の親がしている60のこと

「頭のいい子」の親がしている60のこと

柳沢 幸雄

PHPエディターズ・グループ

これからの時代は「自分からの学び」を生み出すことが最大の力になります。 論理的に考える力、問題を解決する能力、世界を見据える力、リーダーシップ、そこから生まれる「生きる力」を身につけましょう。逆境に負けず、ど…

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