高齢となった父親は、乳児のころに養子に出し、事情を知らずに育った三男と、大人になってから疎遠となってしまった次男との関係に、深い後悔の気持ちを抱いていました。そばにいる長男に配慮しつつも、2人に父としての気持ちを伝えるには、どんな手段があるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
兄弟が揉めないよう、しかし長男にも配慮しつつ…
関塚さんは、自分の財産を3人の子どもへきちんと渡したいと思っています。しかし、身近でずっと自分を気にかけてくれ、なにくれとなく面倒を看てくれたのは長男であるため、その労にはしっかりと報いたいとも考えています。次男は当然ですが、姉と養子縁組した三男も、普通養子縁組の手続きをとっているため、実父母の相続人です。
しかし三男は、長男・次男とは異なる環境に育っており、関塚さんの相続についても温度差があることが想定されます。このまま対策をせずに子ども任せにしてしまうと、兄弟間で揉めごとが起こる可能性もあり、それが以後の関係に悪影響を及ぼすかもしれません。
筆者からは、遺言を作成して兄弟それぞれへの分配を明記することをお勧めしました。遺言すれば、関塚さんの考え方通りにでできますし、なにより父親の「想い」が伝えられます。
遺産分配には「遺留分」への配慮が必要
関塚さんは熟考の末、長男には財産の1/2、次男と三男にはそれぞれ1/4を配分することを決めました。
関塚さんのケースのように、事情により相続人間の配分に差をつけることもあると思います。しかしその場合、「遺留分」の侵害を避けるよう注意なければなりません。
遺留分とは、法定割合の半分に該当し、兄弟姉妹以外の相続人に認められています。関塚さんの財産額と相続人を例に、具体的な金額を計算してみましょう。
関塚さんの財産総額は1億5000万円、相続人は3人なので、
1億5000万円(財産総額)÷3人(相続人数)÷2(半分)=2500万円
上記の計算から、遺留分は2500万円となります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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