脳が疲れ情報を処理しきれなかったとき、ながら行動のとき、気持ちが焦ったときなどに、思いもよらないミスをしてしまうことがあります。ヒューマンエラーを防止するには、活動の流れを追って「要因」を見つけ出すことが重要なのです。※本記事は化学系会社にて5年間ISO規格の品質及び環境マネジメント事務局を担当していた尾﨑裕氏の書籍『ヒューマンエラー防止対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

 

そこで必要になるのが、“ヒヤリハット調査報告書”です。[図表2-右]が事務局作成のヒヤリハット調査報告書です。当日のヒヤリハット発生までの業務内容の経緯や、当人の当日の体調など聞き取った状況を記載します。その時に、ヒヤリハットに至る時間の流
れも意識して聞き取りを行います。

 

“出勤時の体調”から、“アクシデント発生時の体調”までの変化は? 眠気や疲れ、その時の体調や集中度などを含め、その時の状況を詳しく聞き、記録します。“ロールプレイングゲームの主人公がどんなダメージを受けて問題に至ったのか?”を考え、可能であればその時の当事者の心境までこの用紙に記載します。

 

また、聞き取った内容から問題となる項目をピックアップします。m-SHELを意識しながら、問題点として考えられる当人の状況(気がつかなかった、大丈夫だと思った、あわてていたなど)をピックアップ(マルでマーク)します。聞き取りの当日に全て埋める必要はありませんが、当人の状況がどうだったのか、考えられる項目の選択とその状況を生む要素を特定することにも参考となります。聞き取りの作業はここまでです。

 

その後[図表3-右]のように、m-SHELの各要素別に、どのような不整合がそこに存在するのかをあぶり出します。

 

[図表3]m-SHEL分析左:聞き取り内容
右:m-SHEL分析

 

これは、対策メンバーがm-SHELの項目ごとに考えられる問題点を洗い出し、それに対する対策を検討するための書式です。ヒヤリハットの内容を聞きだし、実際の対策としてどうすべきかを話し合い、実施された対策の内容は以下の通りでした。

ヒヤリハット内容の聞き取り後、実施された対策

チームで作業を分担する状況で、1つの業務が特別に過酷な場合、その業務の負担を軽減することを考えます。今回の事例で一番簡単な解決方法として、チームメンバーを1名増員し、負担の大きい監視業務に充てることも考えられますが、現実的には不可能なことです。

 

全体の1日の勤務を見てみると、勤務中に6名のメンバーがそれぞれ2時間休憩を取ります。更に、休憩は勤務の中ごろに分かれて取ることが多いようです。ですが限られた時間内に休憩しなければならないため、2名もしくは3名が同時に休憩を取ることもあるようです。このことから、現場の巡視点検は常に1名が張り付く必要性はなく、エリア負担の一部を他の業務に振り分けることも可能だということが分かりました。

 

勤務上の改善策としては、1日の勤務において、エリア毎の巡視点検時間を計画的に割り振ることで、通常時は計器室に2~3名のメンバーが駐在し、計器の監視にも当たれるよう行動計画の調整を行うことができそうです。

 

行動の計画については、単に4つある各班に一任する性など、全体を考慮した計画的なマネジメントがなされるべきですが、そこで問題となるのが“中央計器監視員”の有資格者が少ないことです。今ある監視ルールの有効性を高めるために、資格取得者を増やすための教育が実施されました。また、資格を有さない者が中央計器室で行えること、行うべきことについて、作業マニュアルを改訂することにより明確化されました。

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