なお、アラーム音は新しく異常が出た時に鳴り始めますが、たった1つある確認ボタンを押した時点で全てのアラーム音がクリアされ、新規に異常が出なければ再度鳴ることはありません。ただし、計装盤パネル上部の異常ランプやDCS画面の異常機器名の表示は、該当する異常が解消されなければ表示が消えることはありません。
ちょうど計器室での監視を担当しておよそ4時間経過しました。ひっきりなしに鳴るアラームに少しうんざりとしてきたところです。
あなたは休息を午後10時頃から午前0時頃まで約2時間取りましたが、夜明けも近いためか、先ほどから少し眠気を感じるようになってきました。その時です、続けさまに鳴るアラームを確認したつもりが、1つ警報を見落としてしまいました。見落としたのは、反応槽への添加配管に設置されたバルブの異常です。何かの原因でバルブが開かない状態になっていて、重要な副原料の添加ができなくなっていました。
幸いにも大きなトラブルになる前にエリア担当者が異常に気付いたため、製品への影響はありませんでしたが、もう少し発見が遅れると大きな損害が発生するところでした。
【検討のポイント】
以上の事例から、現場で働くあなたを中心としたm-SHELモデル(エラーの原因を視覚的にわかりやすく示したもの:図表1)を適用し、何処に問題があるのかを考えてみてください。
この事例は、休息の後4時間の勤務が続き疲労が溜まったことにより、脳の処理能力が低下して、立て続けに発生したアラームの1つを認知しそこなったものです。勤務上のルールや設備の設定などに問題がありそうです。
危険な「うっかりミス」を無くすために
[図表2-左]が、本人から提出されたヒヤリハット報告です。
この報告書からは、ヒヤリハットの発生した当日は忙しい日であったことと、少し眠気があったということしか解りません。たったこれだけの情報から考えうる対策としては、“しっかりと計器を確認する”ことや“重警報確認の重要性”について、当人に対して教育を実施することぐらいが関の山でしょう。これでは、有効な対策が打ち出せたとは言えません。