兄は堅実なサラリーマン生活を送り、定年退職。弟は人間関係に躓いて以降、母親の収入を頼りに引きこもり生活。弟は、90代となった母親の年金と預貯金を握って離さないうえ、遺言書まで書かせており、母親自身もなすすべがない状態です。将来を心配する兄が資産状況を尋ねても、両者からはスルーされ続け…。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
なぜ「公正証書遺言」を選択すべきなのか
遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類の遺言方法があります。
遺言者が自筆証書遺言を残しているケースは多いのですが、内容の不備によって無効になることも少なくなく、注意が必要です。お勧めなのはやはり、公正証書遺言でしょう。
メリットとしては、改ざんや紛失のリスクがない点、遺言者の身体に障害や怪我があっても作成が可能である点、遺言者が亡くなったあとに行われる、裁判所の「検認」が不要になる点、等が挙げられます。
一方、デメリットととしては、手間や時間がかかる、費用が発生する、証人の確保が必要になる、といったものでしょう。
しかしながら、これまで扱ってきた多くの相続問題を考えると、公正証書遺言の仕組みは、デメリットを考慮してもメリットの方が多いといえます。
もし遺言の準備をお考えの場合は、迷わず公正証書遺言の作成をお勧めします。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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