270円の「インスタントみそ汁」爆売れ…その理由は?
インスタントみそ汁といえば、スーパーやコンビニで販売するのが一般的です。これを土産物として売り出したい、と考えたのが愛媛県にある「ギノーみそ」の田中正志社長です。
とはいえ、スーパーで販売している商品をそのまま土産物屋に置いても、土産物を求めて来店した観光客が手を伸ばすことなど期待できません。
お客様が求めている価値は「松山に行ってきた」「道後温泉につかった」という事実を証明することなのです。そこで、同県を代表する観光地の写真を全面に配したパッケージを制作し、「美味しいおみそのおすそ分け」「愛媛の思い出をお届けします」というメッセージをあしらいました。
パッケージは「道後温泉」「松山城」「しまなみ海道」の3パターン。これで「愛媛県に行ってきた」ということを、この商品を通して語ることができます。
さらにパッケージ裏面にもひと工夫。宛先と差出人、メッセージを記入する欄を設け、定形外郵便料金の140円切手を貼ればそのままポストに投函できるようにしました。
この商品は1箱2食入り270円で販売されました。スーパーで販売している大袋入りのインスタントみそ汁は、2食換算約94円です。中身はまったく同じみそ汁ですが、約3倍の価格です。田中社長は「高く設定しすぎたのではないか」と心配していましたが、観光客の反応はまったく逆でした。
「こんなに安い土産物があるなんて!」
人は、置かれた状況と立場によって、金銭感覚が異なります。スーパーを訪れたときは1円単位でチェックしますが、観光客として土産物屋を訪ねたときは、1個のお土産に500円程度の予算を設定しています。そこへ270円の土産物があると知れば、通常の3倍の価格設定でも、安く感じるのです。
この商品には思わぬ波及効果もありました。受け取った人が「郵便受けにこんなものが入っていた!」と驚き、SNSにアップする人が続出しました。そうして情報が拡散され、ヒット商品になったのです。
郵便で送れるお土産という、「思いもよらない価値」を提供する商品の好例といえるでしょう。
松浦 陽司
株式会社パッケージ松浦 代表取締役社長
※本連載では、世界でただ一人の“パッケージマーケッター”松浦 陽司氏の著書『売上がグングン伸びるパッケージ戦略 赤字商品が大ヒット商品に化ける!!』から一部を抜粋して、売れるパッケージの秘密について解説します。