米ハイテク銘柄が調整しても日本株が底堅い理由

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●米ハイテク銘柄は8月に急騰後、9月は調整へ、背景にはオプション取引の存在が指摘されている。

●オプション取引に起因する株価変動は通常一時的なもの、また米ハイテク銘柄はすでに割高だった。

●米ハイテク銘柄など米国株の下げは健全な調整の範囲内であり日本株への影響は限定的とみる。

米ハイテク銘柄は8月に急騰後、9月は調整へ、背景にはオプション取引の存在が指摘されている

米国株式市場では、8月に大きく上昇したハイテク銘柄が、9月に入り調整色を強めています。世界最大の電気自動車(EV)メーカーであるテスラの株価は、8月に74.1%上昇しましたが、9月は11日までの8営業日で25.2%下落しました。また、アップルの株価も、8月に21.4%上昇しましたが、9月の同期間で13.2%下落しました。その他、主なハイテク銘柄も同様の動きが確認されます(図表1)。

 

もともと米ハイテク企業は、新型コロナウイルスの影響下でも業績を伸ばせるとの期待から、投資家に選好されやすい地合いにありました。ただ、8月の株高は、個別株のコール・オプション(買う権利)を購入する投資家の増加が影響したとの指摘もみられます。コール・オプションの売り手は、対象となる株価上昇で損失が生じるため、自ら個別株を買い、その値上がり益で損失を埋め合わせる行動が、株価を押し上げたと推測されます。

オプション取引に起因する株価変動は通常一時的なもの、また米ハイテク銘柄はすでに割高だった

一般に、コール・オプションは、対象となる株価が大きく上昇すれば、オプション価値が増価する可能性が高まります。そのため、コール・オプションを購入した投資家は、権利行使やコール・オプションの売却で、利益を確定しようとします。このような形でオプション取引の解消が進めば、株価の極端な動きも徐々に鎮静化するため、オプション取引に起因する株価の変動は、一時的なものと考えられます。

 

また、米ハイテク銘柄は、以前から割高感が指摘されていました。8月の急騰前、7月31日時点における予想株価収益率(PER)をみると、テスラは300倍超でした。また、GAFAM(グーグルの親会社アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)については、アマゾン・ドット・コムが150倍超で、残りの4社は30倍超でした。

米ハイテク銘柄など米国株の下げは健全な調整の範囲内であり日本株への影響は限定的とみる

9月に入り、米国株は下落した一方、日本株は底堅く推移しました(図表2)。この差が生じた理由としては、①米国株の下げは、マクロ経済や新型コロナの感染状況に新たな悪材料が出たわけではなく、米ハイテク銘柄の下げが主導したこと、②その米ハイテク銘柄は、もともと割高感が強かったこと、③米ハイテク銘柄の個別株オプション取引などが値動きに大きく影響した可能性があること、など米国固有の要因が挙げられます。

 

米ハイテク銘柄の調整について、オプション取引に起因する部分は短期的に解消されるものの、割高感はすぐに修正されないとみています。ただ、前述の通り、コロナ渦における米ハイテク企業の業績期待は強く、米ハイテク銘柄は株価が下がったところで買いたいという投資家は多いように思われます。そのため、今回の米ハイテク銘柄を中心とする米国株の下げは、健全な調整の範囲内であり、日本株への影響は限定的と考えます。

 

注) データは8月が2020年7月31日から8月31日までで、9月は8月31日から9月11日まで。アルファベットはグーグルの親会社 (出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]米主要ハイテク銘柄の騰落率 (注) データは8月が2020年7月31日から8月31日までで、9月は8月31日から9月11日まで。アルファベットはグーグルの親会社
(出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注) データは8月が2020年7月31日から8月31日までで、9月は8月31日から9月11日まで。 (出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日米主要株価指数の騰落率 (注)データは8月が2020年7月31日から8月31日までで、9月は8月31日から9月11日まで。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米ハイテク銘柄が調整しても日本株が底堅い理由』を参照)。

 

(2020年9月14日)

 

市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧