●総裁選は大方の予想通り菅氏勝利、16日の臨時国会における首相指名を経て新内閣発足へ。
●菅氏は緩和的な金融・財政政策を継続し、規制改革に注力、すでに市場は解散総選挙に注目。
●総選挙は結果が重要、与党圧勝なら市場に安心感が広がり、苦戦なら短期政権嫌気の反応か。
総裁選は大方の予想通り菅氏勝利、16日の臨時国会における首相指名を経て新内閣発足へ
自民党総裁選挙の投開票が9月14日に行われました。結果は大方の予想通り、菅義偉官房長官が、有効投票数534票(国会議員票と地方票はそれぞれ393票、141票)のうち、約7割にあたる377票(同288票、89票)を獲得し、新総裁に選出されました。岸田文雄政調会長は89票(同79票、10票)で2位、石破茂元幹事長は68票(同26票、42票)で3位となりました。
菅氏は、9月16日に召集される臨時国会で次期首相に指名され、同日中に新内閣を発足させる見通しです。なお、自民党の役員人事については、二階俊博幹事長(二階派)を再任し、総務会長に佐藤勉元総務相(麻生派)、政調会長に下村博文選挙対策委員長(細田派)、後任の選対委員長に山口泰明組織運動本部長(竹下派)を起用するとみられます。総裁選で菅氏を支持した派閥に配慮する形になっており、9月15日の臨時総務会で決定されます。
菅氏は緩和的な金融・財政政策を継続し、規制改革に注力、すでに市場は解散総選挙に注目
改めて、菅氏の政策スタンスを確認してみると、アベノミクスについては責任を持って引き継ぐと明言しており、新型コロナウイルス対策が最優先との見解を示しています。また、必要であれば、金融政策をさらに進め、中小企業や国民への追加給付もしっかり対応したいとし、消費税率は今後10年ぐらい上げる必要はないと述べています。これらを踏まえると、緩和的な金融・財政政策は当面継続と判断できます。
また、規制改革は徹底してやりたいと強く表明していることから、アベノミクスのうち成長戦略に力を入れ、独自色を打ち出したいとする意向がうかがえます。これまでの発言から、菅氏は行政のデジタル化、中小企業や地方銀行の再編、携帯電話の料金引き下げなどに重点を置くと思われます(図表1)。なお、総裁選が終了したところで、市場はすでに、衆議院の解散と総選挙の時期に注目し始めています。
総選挙は結果が重要、与党圧勝なら市場に安心感が広がり、苦戦なら短期政権嫌気の反応か
主な政治日程は図表2の通りです。今後の日程を踏まえ、年内の解散総選挙を予想する向きも多くみられますが、新政権について国民の信を問うという大義名分で、早期に解散総選挙が行われることは十分考えられます。ただ、菅氏は、9月9日の民放の番組で、新型コロナの感染が収束していない状況では「解散とかそういうことじゃない」と述べており、やや慎重な姿勢を示しています。
解散総選挙は、新政権が国民の信を得られると確信したタイミングで行われると思われるため、市場の警戒感が強まる恐れは小さいと考えます。より重要なのは選挙結果であり、与党圧勝となれば、来年9月の自民党総裁選での菅氏再選、長期政権安定の思惑から、市場に安心感が広がる可能性が高まります。一方、与党が苦戦を強いられる結果となれば、早々にポスト菅の動きが強まると予想され、短期政権を嫌気する市場の反応が見込まれます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『菅自民党総裁誕生~今後の注目ポイントを整理する』を参照)。
(2020年9月15日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト