個人が所有不動産を売却する際には、売却(譲渡)益に対して譲渡所得税が課されます。その計算過程においては、不動産をどのように取得したのかという背景や、売却する理由などを考慮して、税金計算における特例規定が設けられています。今回は、税理士法人田尻会計の税理士・古沢暢子氏が「所有期間」に着目して、個人が不動産を売却した場合に受けられる特例規定を整理していきます。※各規程における税務上の「所有期間」とは、不動産を売却した年の1月1日現在までの経過年であり、売却時点までの経過年ではありません。以下の「所有期間」は全て税務上の所有期間によって判断することに注意してください。

「譲渡所得税」と「税額計算」の原則

①売却にかかる税金は、他の所得と区分して計算する

個人が不動産を売却した際、収入金額からその不動産の取得費と譲渡にかかった費用を差し引いた譲渡所得に対して所得税と住民税が課されます。この譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの他の所得とは区分して課税されます。

 

所得税は、所得が高くなるほど高い税率が課される累進課税のため、不動産を売却した年の税額が急に高くならないように、譲渡所得税を他の所得と区分して計算する分離課税の制度が設けられているのです。

 

譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税(所得税・復興所得税・住民税)=譲渡所得×税率(税率は所有期間で異なります)

 

②長期間所有していた不動産を売却したら税率が軽減される

譲渡所得税の税率は、所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」と所有期間が5年超の「長期譲渡所得」で異なり、所有期間5年超の税率が軽減されています。

 

◆所有期間が5年以内の場合: 

短期譲渡所得×税率39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)

◆所有期間が5年超の場合:  

長期譲渡所得×税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

 

不動産…売ったら税金はいくら?(※画像はイメージです/PIXTA)
不動産…売ったら税金はいくら?(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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