学習塾・灘学習院の学院長である江藤宏氏の著書『東大・京大に合格する子どもの育て方』より一部を抜粋し、でたらめな答案を書いていた生徒が、京大進学を果たした理由を解説します。

「でたらめ答案」君の可能性を引き出した言葉は…

彼の頭の中では「どうしてこうなるのだろう?」「この問題文の意味はなんだろう?」と自問自答が繰り返され、真剣に考え続けていたのです。考え続けてさえいれば、答えに至らなくとも頭を使う訓練には十分になります。

 

彼はこれまでのような適当な答えを書かなくなりました。やがて鉛筆を持ち、手を動かすようになっていったのです。初めて自分で納得のいく答えを導き出せた時の輝くような彼の笑顔を、私はこの先、決して忘れることはないでしょう。

 

それからの彼の成績の伸びは、まさに「すさまじい」としかいい様がないレベルでした。とくに、中学3年生になってからの伸び具合はまさにロケットのようで、数学、理科第一分野などの教科では、瞬く間に塾のトップクラスの仲間入りを果たしました。

 

その結果、目指していた私立トップレベルの高校に合格。高校時代には数学と物理でたびたび満点を取り、学年一位を取ったこともありました。

 

「考える力」を手に入れた彼は、英語や社会など、覚えることが必要な科目も、苦労しながら着実に力を伸ばしていきました。今では京都大学工学部の大学院に進み、研究者を目指してがんばっています。

 

「でたらめ答案」君の可能性を引き出した塾と学校の違いは何だったのでしょうか?

 

塾には、彼のめちゃくちゃな答案を真剣に読もうとする人物がいたのです。彼の出した支離滅裂な回答も、私たちは「ここは、どういう意味?」「どうして、そう思うの?」と真摯に向き合い、読み解こうとしました。

 

実はこの「どうして?」とか「なぜ?」という疑問視こそが、子どもの考える力を伸ばす魔法の言葉、マジックワードなのです。このように問いかけられると、子どもは理由を考え始めます。つまり、頭が動き始めます。頭が動き始めることが、思考力を養う上では決定的に重要なのです。

 

ただし、同じ「どうして?」や「なぜ?」を使うとしても、絶対に犯してはならないことがあります。むちゃくちゃな答えに対して「どうして、こんなバカなことを書いたのだ」「なぜ、こんな愚かなことを考えたのだ」となじるような口調でいってはなりません。どれほどとんでもない内容が書いてあったとしても、絶対に非難しないことです。

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東大・京大に合格する 子どもの育て方

東大・京大に合格する 子どもの育て方

江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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