抜群の語学力や天才的な学力がなくとも、米国の名門4年制大学へ進学することは可能です。4年制大学への編入を実現する、短大での単位取得のコツを解説。※本連載は、株式会社Sapiens Sapiens代表取締役の山内勇樹氏の著書『東大・京大卒に勝てる! 世界のトップ大学に編入する方法 』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

「世界の名門大学」への進学を実現する方法とは?

近年、海外の大学を志望する学生が増えています。とはいえ、もちろん「海外留学は国内進学より優れた選択肢である」というわけではなく、また「国内外に関わらず、誰しも名門大学を目指すべき」というわけでもありません。当然、そういった大学には関心のない方々もいらっしゃるでしょう。

 

しかし一方、何が何でも海外の名門大学に合格したい!という熱意を抱く方々もいらっしゃいます。本連載は、「世界トップ大学」への進学を目指している、あるいは関心がある方々を対象に、短大を経由して名門大学に編入する「トランスファー留学」について、具体的な手法を解説するものです。
 

短大から「世界トップ大学」への編入を狙うには、短大での成績が肝心です。前回の記事『米国名門大学への「編入ルート」を拓く、短大時代の単位取得法』では、ほぼ「オールA」を狙う4つの戦略のうち、方法①として、1年目は体育を選択すべき理由を解説しました。本記事では、方法②、③を詳述します。

 

読者の中には「そこまでするか?」「学びの本質から少々ズレているのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、あくまでも本記事は、世界大学ランキングの上位校に合格することを「最優先事項」として考えた場合の話です。

あえて「すでに理解している科目」を選択

方法②:日本ですでに習った内容の授業を選ぶ

 

最初の学期、その次の学期では、高校卒業までに自分がすでに身につけているスキルや知識を持っている授業を探して履修します。たとえば、コンピューターであれば、みなさん日々使いこなしているはずですから、「コンピューターの基礎的な技術(Computer Administration)」などは、ほとんどの方が必ずAをとれる授業ではないかと思います。

 

プログラミングができるなら、プログラミングの授業を、韓国語をかじったことがあるなら「初級韓国語」、簿記を学んだことがあるなら「初級簿記」といった具合です。そして必ずAを取ってください。

 

この時期の履修教科選びで大切なのは、「将来何を学びたいか」ではありません。将来の希望する専攻が「哲学」であっても、Aを取れる教科が理系にたくさんあるなら、どんどん履修していきます。目的は「トップ大学に入ること」だからです。逆に、編入を大目標としないのであれば、この基準は捨ててかまいません。自分が取りたいクラスや取るべきクラスを自由に取ってください。

 

志望する大学が国内にせよ海外にせよ、進学先を考えるにあたっては、個々人の価値観や優先順位が影響するでしょう。大学ランキングを最も重視する方々もいらっしゃいます。その際、トランスファー留学で実現しようと考えるのであれば、短大では「学びたいこと」はひとまず脇に置きましょう。トップ大学に合格することだけを目標とした履修教科を選ぶのです。ここはとても大切なポイントです。「Aを取れる授業で、確実にAを取る」。まずはそれに徹してください。

 

また、最初のほうの学期では、苦手教科より、内容があらかじめわかっている授業を取ることで、授業内容も理解することができ、英語力の向上にもつながるというメリットもあります。

 

そして前回の記事でもお話ししたように、スタートダッシュで好成績を得ることで、自分の中の士気を高めることができます。「ずっとこの成績を保とう」という勉強へのモチベーションに直結するのです。

 

補足ですが、日本で履修したクラスを、改めて英語で取ることにより得られる「学び」は、決して小さくありません。教科の名称は同じでも、教育法や教科書、授業の内容、それらを通じて養われる知識やスキルには、日本と海外とでは様々な違いがあるからです。

 

ただし、どちらが良い、悪いという話ではありません。それぞれの違いを経験することにより、また異なるスキルを習得できるという点が重要なのです。私はそこに大きな意味があると考えています。

数学選択により「ついていけずに挫折」の事態を回避

方法③:狙うは数学。文系の人でも戦いやすい

 

次に皆さんにうれしいニュースをお伝えしたいと思います。アメリカの短大の数学レベルは、決して高くありません。日本と比較して「低い」と言ってもいいでしょう。日本の高校で普通に数学を勉強してきた方であれば、「難しくてついていけない」ということは、決してありません。

 

「自分は文系だから数学はちょっと…」という方もいるかもしれません。でも、大丈夫です。文系志望の方であっても、十分にこなせる内容なのです。

 

ですから私は、専攻が理系文系にかかわらず、「数学の授業を最初の学期で最低1つは取るように」と、伝えています。可能であれば、2つ取るとよいと思います。日本での中学、高校レベルの数学なので、Aを取るのが難しくないからです。

 

数学は文系でも理系でも、専攻に関係なく必ず取らなければならない決まりとなっています。そして「1学期で数学を制する」ことが、後のトランスファーの成功につながっていくのです。

 

1学期で数学を制する者は「編入」をも制す
1学期で数学を制する者は「編入」をも制す(※写真はイメージです/PIXTA)

 

私が数学の履修をおすすめするのは、内容が簡単だから、という理由だけではありません。英語力の問題です。

 

留学したばかりのころの英語力では、心理学、哲学、文学といった、語学力が必要とされている授業では、いい成績は望めないからです。そもそも大学の授業にも慣れていませんし、ネイティブの英語にも慣れていないはず。ネイティブが話すスピードで、専門用語も含まれている状況では、話す内容が半分わかればいいくらいの英語力ではないでしょうか。実際にこのような間違った教科を履修して「自分は授業についていけない」と挫折してしまう留学生も多いのです。

 

しかし、数学は違います。数式は多少の表記の違いはあるものの基本的には世界共通です。先生の英語が理解できなかったとしても、教科書や黒板に書かれている数式は理解できます。「まったく何の話をしているのか理解できない」という、最悪の事態には陥ることはありません。

 

裏を返すと「留学するなら数学はちゃんと勉強しておきましょう」ということが言えますね。数学力が著しく欠如している生徒さんには、私も英語で数学を教え、その上で渡航するように指導しています。

高校時代の復習をしつつ、適切な項目を選択

大切なのは、確実にAを取ることですから、内容にも注意をしていかなければなりません。アメリカの数学の基本的なカリキュラムは、以下のようになっています。

 

基本数学(Basics)→代数学(College Algebra)→三角関数(Trigonometry)→総合数学(Pre-Calculus)→微分積分(Calculus)

 

これらとは別に、統計(Statistics)と行列(Finite math)が設けられていることがほとんどです。

 

最初の「基本数学」は、小学校、中学校レベルのものなので、通常日本人は履修することができません。ですから、たいていの日本人が高校で習う「関数」、「三角関数」を最初の学期で履修します。理系専攻で数学が得意な方は、「総合数学」くらいからはじめてもかまいませんが、いきなり「微分積分」からでは、ハードルが高いと思います。

 

「行列」は高校によっては必修でないこともあるので、知識として抜け落ちている場合もあります。また、統計の知識がないままに「統計」を取ることも、おすすめできません。まずは、高校で習ったことを復習しつつ、確実にAを取ることを目標に履修する数学を選びましょう。

編入成功者の多くは「最初に数学を選択している」事実

実際に、編入でトップ大学に合格している学生たちは、最初のほうの学期で数学の授業を多く取っています。数学には、必修のものと必修ではないものがあります。必修ではない数学であっても、1学期で好成績を獲得するために履修しておくのはいい手段です。しつこいですが、「スタートダッシュで好成績を得る」ことが、自分の中の士気を高めてくれるからです。

 

繰り返しになりますが、最初の学期に数学の授業を2つ履修しましょう。もしかすると、短大の中にいる留学カウンセラーの中には「数学2つの履修はバランスが悪い」と言う人もいるかもしれません。しかし、そのアドバイスは丁重にお断りしてください。

 

大学ランキング13位のUCバークレー大学に合格した学生は、最初の学期に数学と体育(バドミントン)、得意なパソコン、そして英語の授業を取りました。数学はもっと難しい授業も取れたのですが、最初の学期でAを取るために、簡単な授業からスタート。いいスタートを切れたので、そのまま「A学生」になり、無事にトップ大学へのトランスファーを叶えました。

 

次回は、「オールA」に近い成績を出すための4つの戦略のうち、最後の方法を紹介します。

 

上記および次回の内容は、あくまで「世界の名門大学への編入」を最重要視する場合の話です。もちろん、名門大学への留学だけがすべてではありません。

 

実際、私が英語を指導する時も、名門大学以外の選択肢を提案することがあります。生徒さんの目標や夢を聞いたうえで、本人が志望する名門大学だけではなく、有名ではないけれど目標にぴったりと合致する別の大学をおすすめすることや、また「それなら、国内の大学のほうが良いのでは?」と留学以外の道を提案することもあります。

 

しかし、別の選択肢をあげられても「それでも自分は海外の名門大学に行きたい!」という方々もいらっしゃるはずです。もちろん、それぞれの人生や価値観に基づく選択が大切ですから、第三者の意見は参考にとどめておくのが良いでしょう。服従する必要はありません。そういった意味で、以降の具体的な手法論や、本連載の過去記事が参考になれば幸いです。

 

 

山内 勇樹

4技能英語講師

 

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山内 勇樹

ダイヤモンド社

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