本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CI前月差+3.1で2ヵ月連続上昇、一致CI同+1.8と2ヵ月連続上昇

 

7月分の基調判断は「悪化」、8月分で一致CIが上昇なら「下げ止まり」に

 

 

 

●7月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+3.1と2ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差プラス寄与度に、新規求人数、新設住宅着工床面積、東証株価指数の3系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●7月分の一致CIは前月差+1.8と2ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、輸出数量指数の4系列が前月差プラス寄与度に、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の4系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●一致CIの3ヵ月後方移動平均は前月差▲0.77ポイント下降し、10ヵ月連続の下降になった。7ヵ月後方移動平均は前月差▲2.55ポイント下降し、21ヵ月連続の下降になった。

 

●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年5月分~7月分は「下げ止まり」の判断だったが、19年8月分で「悪化」に下方修正された。19年8月分~20年6月分に続き、7月分も「悪化」継続となった。

 

●「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの3ヵ月後方移動平均の前月差がプラスに変化し、プラス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累計)が振幅目安の+0.93以上になることが必要だ。過去の数字が不変だと仮定すると、8月分一致CI前月差が+0.1の上昇になりさえすれば、8月分の一致CIの3ヵ月後方移動平均の前月差が+1.70となり、「下げ止まり」の条件を満たすことになる。

 

 

●7月分の先行DIは88.9%と7ヵ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列がプラス符号に、新設住宅着工床面積1系列がマイナス符号になった。

 

●7月分の一致DIは75.0%と14ヵ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列がプラス符号に、投資財出荷指数、有効求人倍率の2系列がマイナス符号になった。

 

●9月28日発表予定の7月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は9月10日である。また在庫率関連データが9月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●7月分景気動向指数・改訂値で、一致CIには所定外労働時間指数が新たに加わる。7月分速報値の発表日は9月8日、確報値の発表日は9月25日なので、28日発表の景気動向指数・改訂値では確報値が使われる。生産指数関連データが9月14日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが9月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●8月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス、消費者態度指数1系列は前月差マイナスである。

 

●また、8月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列で、全系列がプラス符号になることが判明している。8月分速報値段階の先行DIは44.4%以上100.0%以下になることが確定している。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年7月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

(2020年9月8日)

 

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト
 

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