ポスト安倍政権と日銀の金融政策

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●菅官房長官は、大規模金融緩和継続の意向、岸田政調会長は、マイナス金利深堀りには反対。

●石破元幹事長は、アベノミクス継続も変更の可能性を示唆、ただ3氏とも当面は緩和継続の考え。

●しかしながら、これまでの金融緩和で物価目標は未達、改めて政策の枠組みの検証は必要だろう。

菅官房長官は、大規模金融緩和継続の意向、岸田政調会長は、マイナス金利深堀りには反対

今回のレポートでは、ポスト安倍政権と日銀の金融政策について考えます。安倍首相の後継を選ぶ自民党総裁選への立候補者は9月2日、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3氏に確定しました。総裁選は8日に告示され、14日に両院議員総会で投開票が行われます。国会議員票394票と47都道府県連の代表が各3票を投じる地方票141票の合計535票を争うことになります。

 

まず、金融政策に関する3候補の見解を確認します(図表1)。菅氏は、2日の記者会見で、日銀との関係も安倍首相と同じように進めていきたいと述べ、大規模な金融緩和を継続する意向を示しました。一方、岸田氏は、これ以上の金融緩和はどうだろうかという議論があり、地方の金融機関など様々なところで弊害が出ていると指摘し、更なるマイナス金利の深堀りには反対の姿勢です。

石破元幹事長は、アベノミクス継続も変更の可能性を示唆、ただ3氏とも当面は緩和継続の考え

石破氏は2018年4月、アベノミクスについて、大胆な金融緩和も機動的財政出動も、未来永劫続くものではないと述べていますが、政策そのものは否定していません。9月1日の記者会見では、アベノミクスには評価すべき点がたくさんあるとしつつも、個人の所得が伸び悩んでいる点を指摘しました。それを踏まえ、アベノミクスは継続し、消費性向の高い人の所得を上げていくことを考え、変えるべきものは変えるとの見解を示しました。

 

なお、岸田氏は、金融政策の弊害に触れながらも、政策は市場に織り込み済みで、これを変えると別の弊害になると述べています。また、石破氏も、金融政策を急に変えることはないと明言しています。したがって、3氏のうち誰が新総裁になっても、現行の大規模な金融緩和政策は継続される可能性が高いと考えられます。それでは次に、アベノミクス下における日銀の金融政策の経緯を振り返ります。

しかしながら、これまでの金融緩和で物価目標は未達、改めて政策の枠組みの検証は必要だろう

日銀は2013年4月に「量的・質的金融緩和」の導入を決定し、いわゆる異次元緩和を開始しました。その後、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決め、マイナス金利という未踏の領域に踏み込み、同年9月には「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、イールドカーブ・コントロールに挑みました。ただ、2%の物価目標は未達のままです(図表2)。

 

なお、現代の標準的な動学的マクロ経済理論においては、金利が下限に張り付いたもとで純粋にマネタリーベースの量を増大させる政策は効果を持たないと考えられています。ポスト安倍政権で、金融政策の基本的な方向性が変わらないことは、市場にとって短期的には安心材料ですが、改めてこれまでの政策効果を振り返り、日銀の若田部副総裁が9月2日の講演で示したように、金融政策の枠組みを検証する必要性はあると考えます。

 

(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ポスト安倍3候補の金融政策の考え方 (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2013年1月から2020年7月。消費者物価指数は生鮮食品を除く総合で消費税調整済指数。 (出所)総務省のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日本の消費者物価指数の推移 (注)データは2013年1月から2020年7月。消費者物価指数は生鮮食品を除く総合で消費税調整済指数。
(出所)総務省のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ポスト安倍政権と日銀の金融政策』を参照)。

 

(2020年9月3日)

 

市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧